過去最高益なのに、Alphabetは四半期で58.55億ドルを設備に持ち出していた

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過去最高益なのに、Alphabetは四半期で58.55億ドルを設備に持ち出していた【2026年7月】

過去最高益なのに、Alphabetは四半期で58.55億ドルを設備に持ち出していた インフォグラフ

Alphabetが米国時間2026年7月22日 (水) の取引終了後、日本時間では23日 (木) 早朝に発表した2026年第2四半期 (4-6月期) 決算で、四半期のフリーキャッシュフローが▲58.55億ドルになりました。同じ四半期の純利益は1,121億ドルで、これは同社の過去最高です。数字がぶつかって見えますが、矛盾はしていません。フリーキャッシュフローが測っているのは利益ではなく現金の出入りだからです。ただ、そこで説明を終えると肝心なところを取り落とします。過去最高の1,121億ドルのうち771億ドルは保有株式の評価益で、Alphabet自身が決算資料の脚注にその内訳を書いています。本記事は決算リリースと決算スライドの数字を使って、この四半期に何が起きたのかを順に分解します。

この記事のポイント

  • 四半期のフリーキャッシュフローは▲58.55億ドル。営業キャッシュフローは390.69億ドルで前年同期比+41%と伸びたが、設備投資が449.24億ドルと前年同期のちょうど倍になった
  • フリーキャッシュフローとは、営業活動で得た現金から設備投資を差し引いた残りのことである。Alphabetの定義もこれと同じで、買収や有価証券の購入は計算に含まれない
  • 純利益1,121億ドル (+298%) のうち771億ドル・希薄化EPSでは$6.26分が株式評価益。Alphabet自身が脚注で開示している。この分を除くと希薄化EPSは約$2.85で、市場コンセンサスの$2.87〜$2.89とほぼ同水準
  • 自社株買いは当四半期ゼロ (前年同期は132億ドル)。同じ四半期に株式で純額496億ドル、社債で純額203億ドルを調達し、最大400億ドルのATMプログラムも設定した
  • 「赤字」ではない。過去12か月のフリーキャッシュフローは532億ドルのプラス、期末の現金及び現金同等物は559億ドルで、前年同期の210億ドルから増えている

まず数字を並べる

項目 2026年Q2 前年同期比
連結売上 1,197.96億ドル +24% (定常為替+23%)
連結営業利益 407.70億ドル +30% (営業利益率34%)
純利益 (普通株主帰属) 1,121.07億ドル +298%
希薄化EPS $9.11 +294%
営業キャッシュフロー 390.69億ドル +41%
設備投資 449.24億ドル +100%
フリーキャッシュフロー ▲58.55億ドル 前年同期は53.01億ドル
Google Cloud売上 248億ドル +82%
Google Cloud営業利益 88.14億ドル +212%

売上は12四半期連続で2桁成長。Google Servicesは945億ドルで+15%、Google Cloudのバックログは5,140億ドルと決算スライドに明記されています (いつ売上になるかの内訳をAlphabetは開示していません)。従業員数は198,933名で、前年同期の187,103名から増えています。

マイナスの原因は営業CFではなく設備投資

「稼ぐ力が落ちたからキャッシュフローがマイナスになった」という読み方は、この四半期に関しては当たりません。営業キャッシュフローは390.69億ドルで、前年同期の277.47億ドルから41%増えています。変わったのは出ていく側です。

四半期 フリーキャッシュフロー 設備投資の前年同期比
2025年Q2 53.01億ドル +70%
2025年Q3 244.61億ドル +83%
2025年Q4 245.51億ドル +95%
2026年Q1 101.16億ドル +107%
2026年Q2 ▲58.55億ドル +100%

設備投資は5四半期続けて前年同期比+70%以上で伸び、当四半期は+100%の449.24億ドルになりました。営業キャッシュフローの伸び (+41%) では追いつかず、差し引きの符号が反転したという構図です。なお営業キャッシュフローは前四半期の458億ドルからは減っており、ここに運転資本の増加が響いています。

当四半期の技術インフラ投資の内訳は、およそ6割がサーバー、4割がデータセンターとネットワーク機器だったと、決算説明会でCFOが説明したと伝えられています。Alphabetは公式のテキスト版transcriptを公開していないため、本記事では発言の逐語引用は行いません。

過去最高益1,121億ドルの中身を割る

ここが今回の決算でいちばん取り違えやすいところです。

純利益1,121.07億ドルは前年同期比+298%、希薄化EPSは$9.11で+294%。数字だけ見れば異次元の伸びです。しかし当四半期は株式証券の評価損益が990.31億ドル計上されており、その他の項目のマイナスを差し引いた「その他の収益 (純額)」は979.83億ドルです。

Alphabet自身が決算リリースの脚注で、この株式評価益が法人税を219億ドル、純利益を771億ドル、希薄化EPSを$6.26押し上げたと開示しています。

この分を差し引くと次のようになります (以下の引き算はQuotidiaによるものです)。

  • 希薄化EPS: $9.11 − $6.26 = 約$2.85
  • 純利益: 1,121億ドル − 771億ドル = 約350億ドル

市場コンセンサスは$2.87〜$2.89と報じられていました。つまり評価益を除いたベースでは、EPSはほぼ市場予想どおりだったことになります。「EPSが予想を216%上回った」という形の報じ方を見かけますが、それは未実現の評価益を含んだ数字と予想を突き合わせたものです。

評価対象となった銘柄については、6月に上場したSpaceXとAnthropicだと報じられています。ただしこれらは二次情報で、Alphabetの開示に銘柄名はありません。Alphabet自身も、保有投資の価値変動が今後のその他収益のボラティリティに大きく寄与しうると脚注で注意を促しています。評価益は上にも下にも動きます。

資本政策が切り替わった四半期

フリーキャッシュフローの符号よりも、Quotidiaが重く見ているのはこちらです。この四半期に起きたことを並べます。

  • 自社株買い: ゼロ。前年同期は132億ドル。年初来で見ても、前年の283億ドルに対して当年はゼロ
  • 株式による調達: 純額496億ドル。2026年6月に普通株と強制転換型優先株で実施。Alphabetはリリースで、用途にAIインフラとグローバルな計算基盤を拡張するための設備投資を含むと明記している
  • 社債による調達: 純額203億ドル。当四半期に無担保シニア債で実施
  • ATMプログラム: 最大400億ドルの売出枠を設定。ただし6月30日時点で1株も売却しておらず、リリースで説明されている主な用途は従業員株式報酬にかかる納税対応

株式と社債で合わせて699億ドルを外から調達し、同じ期間に自社株買いは止めた。「稼いだ現金を株主に返す会社」から「外から資金を集めて設備に投じる会社」へ、資本政策の重心が動いた四半期だと読めます (この読み方はQuotidiaの整理です)。なお配当は継続しており、普通株が1株$0.22 (9月14日支払)、優先株が1株$12.15 (8月15日支払) です。

「上場以来初」という表現について

複数の媒体が、四半期フリーキャッシュフローのマイナスは「上場以来初」だと報じています。ただしこれはAlphabetの公式表現ではありません。決算リリースにも決算スライドにも「初」にあたる記述はなく、経営陣の発言としても確認できていません。Quotidiaも2004年の上場以降の全四半期を突合したわけではないため、本記事では「複数の媒体がそう報じている」という帰属付きの記述にとどめます。

それでも「現金が尽きる」話ではない

四半期の数字が強烈なので誤読されやすいところを、先に潰しておきます。

  • 過去12か月のフリーキャッシュフローは532億ドルのプラスです。前年同期の667億ドルからは20%減っていますが、水面下ではありません
  • 期末の現金及び現金同等物は559億ドルで、前年同期の210億ドルから大きく増えています。株式と社債の調達がここに入っています
  • 純利益は過去最高、営業利益率は34%で前年から2ポイント改善しています

一方で、来年以降に効いてくる論点もあります。当四半期の有形固定資産の減価償却費は71.04億ドルで、前年同期の49.98億ドルから42%増えました。設備投資はキャッシュフローには即座に効きますが、損益計算書には減価償却費として数年かけて遅れて効いてきます。技術インフラ投資の大幅な増加は減価償却費とデータセンターの運営費という形で今後も損益を圧迫し、フリーキャッシュフローについても当面は圧迫が続く見込みだ、という趣旨の説明が決算説明会であったとも伝えられています。

今週、残りの3社が続く

他社との比較は、本稿公開時点 (2026年7月27日) では通期ガイダンスか前四半期の実績に限られます。

2026年通期 設備投資ガイダンス 直近で公表済みの四半期実績
Alphabet 1,950〜2,050億ドル (旧1,800〜1,900億ドル) 2026年Q2: 449.24億ドル
Amazon 約2,000億ドル 2026年Q1: 442億ドル (+77%)
Microsoft 約1,900億ドル (暦年ベース) FY26 Q3 (1-3月期): 319億ドル
Meta 1,250〜1,450億ドル (旧1,150〜1,350億ドル) 2026年Q1: 198.4億ドル

MicrosoftとMetaは2026年7月29日、Amazonは7月30日に決算発表を予定しており、本稿公開時点で3社のQ2実績は未公表です。Alphabetの通期ガイダンス引き上げ (上限だけでなく下限も150億ドル上がっています) は決算説明会でのCFO発言として伝えられているもので、Alphabet以外の数値も各社の開示または報道に基づき、本記事では直接の原本確認をしていません。なお2027年も大幅に増えると言われているのは設備投資であって、フリーキャッシュフローの話ではありません。

日本から読むときの注意点

  • 「赤字」ではない: フリーキャッシュフローのマイナスは損益の赤字とは別物です。純利益は過去最高で、営業利益率も改善しています
  • 過去最高益もそのままでは使えない: 1,121億ドルのうち771億ドルは未実現の評価益です。引用や比較をするときは、評価益を除いたベース (希薄化EPS約$2.85) を併記するのが安全です
  • 株価の下落率は媒体で割れる: 終値ベースのGOOGL (Class A) は現地時間7月23日に−7.13%。翌24日は+0.65%で小幅に戻しています。GOOG (Class C) との違いや、場中値か終値かで数字が変わります

まとめ(FAQ)

Q. Alphabetは赤字になったのですか?
A. いいえ。純利益は1,121億ドルで過去最高です。マイナスになったのは四半期のフリーキャッシュフロー (▲58.55億ドル) で、これは現金の出入りを見る指標です。

Q. なぜフリーキャッシュフローがマイナスになったのですか?
A. 設備投資が449.24億ドルと前年同期のちょうど倍になり、営業キャッシュフロー (390.69億ドル・前年同期比+41%) を上回ったためです。稼ぐ力が落ちたわけではありません。

Q. 「EPSが市場予想を216%上回った」という記事を見ました。
A. その数字は株式評価益を含んだ$9.11と市場予想を比べたものです。Alphabet自身が脚注で開示している押し上げ分$6.26を除くと約$2.85となり、コンセンサスの$2.87〜$2.89とほぼ同水準です。

Q. 手元資金は大丈夫なのですか?
A. 過去12か月のフリーキャッシュフローは532億ドルのプラスで、期末の現金及び現金同等物は559億ドル (前年同期210億ドル) です。加えて当四半期に株式で496億ドル、社債で203億ドルを調達しています。

Quotidia の視点

Quotidiaがこの決算で分けたのは、動いた現金と、値がついただけの数字です。過去最高の純利益1,121億ドルは、771億ドル分が保有株式の評価益でした。売って入金された金ではありません。しかも外部の推測ではなく、Alphabet自身が脚注で押し上げ幅を開示しています。それを引けば希薄化EPSは約$2.85、市場コンセンサス$2.87〜$2.89とほとんど変わりません。「予想を216%上回った」が成立するのは、未実現の評価益を含んだ数字を予想と突き合わせたときだけです。もう一点、Quotidiaが構造的だと考えているのはフリーキャッシュフローの符号ではなく資本政策の向きです。前年同期に132億ドルあった自社株買いはゼロになり、同じ三か月に株式で496億ドル、社債で203億ドルを外から調達しました。合わせて699億ドル。うち株式の496億ドルは、AIインフラ拡張の設備投資を用途に含むとリリースに明記されています。返す側から集める側へ、資金の向きが一四半期で入れ替わった。今週後半に決算を出す各社を読む物差しはここです。

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