声優の声をAIに使うなら、段階ごとに本人の書面の同意を。日本俳優連合がガイドライン

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声優の声をAIに使うなら、段階ごとに本人の書面の同意を。日本俳優連合がガイドライン【2026年10月】

声優の声をAIに使うなら、段階ごとに本人の書面の同意を。日本俳優連合がガイドライン インフォグラフ

俳優や声優の約2,600人が加盟する日本俳優連合 (日俳連) は2026年10月15日(木)、「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を公表し、声をAIに使う事業者に、学習・生成・利用の3段階それぞれで本人の書面の事前同意を取るよう求めました。日俳連は、俳優や声優が加盟して出演条件や権利の保護に取り組む協同組合です。ガイドラインは、将来の使い道をまとめて一度に買い取る契約 (バイアウト契約) を認めず、同意の有効期間を原則として最長1年としました。業界団体が自主的に定めたルールで、法的な拘束力はありません。2026年10月時点の情報です。

この記事のポイント

  • 同意は3段階で別々に、書面で取る。声を学ばせる、AIで声を作る、作った声を作品に使う、の段階ごと。口頭や事後の承諾は無効扱い
  • 一括の買い取り契約は認めない。同意は原則として最長1年で、無期限の同意は無効扱い
  • アニメと吹き替えでは、原則としてAIで声優を置き換えない。雑音の除去などの最小限の補正は、合意の範囲で認める
  • 亡くなった人の声は、原則としてAIに使わない。例外は制作中だった続編などに限られ、故人が関わっていない新作では一切認めない
  • 個人の配信者や同人の作り手も「事業者」に含む。AIの開発や音声の出力が日本国外で行われても適用するとしている

同意は3段階に分けて、書面で

ガイドラインは全22条あります。中心は第8条の同意の決まりで、AIで声を扱う流れを「分析・学習」「生成・構築」「出力音声のプロジェクト利用」の3段階に分け、段階ごとに実演家 (俳優や声優など、演じる人) へ目的を示して、書面で同意を取るよう求めています。口頭での承諾、黙っていることを承諾とみなす扱い、あとからの承諾は、どれも無効として扱います。広告に使う場合はキャンペーンごとにセリフなどの個別の同意を取り (第8条4項)、別の言語に変換するときは言語ごとに同意を取ります (第15条)。

主な期限は次のとおりです。

決まり 中身 条文
事前の通知 新しい学習・開発は着手の7日前まで、同意済みのモデルでの出力は48時間前までに、書面で知らせる 第7条
同意の有効期間 原則として最長1年。長期のゲーム・アニメ制作は合理的な範囲で1年を超えてもよい。無期限の同意は無効扱い 第12条
撤回したとき 撤回の合意から30日以内に音声データとプロンプト (AIに出す指示の文章) を削除し、学習済みモデルは速やかに使うのをやめる 第17条
似た声の疑い 学習データやプロンプトの開示を請求でき、事業者は14日以内に開示する 第18条

お金については、通常の出演料とは別に「学習・開発料」「生成AI使用料」「追加使用料 (広告)」「多言語化使用料」を設け、対価が合意に至らなければAIで利用してはならないとしました (第16条)。AIで作った音声には、AIで生成したこと、AIの事業者名や製品名、元の実演家の名前を表示します。実演家の側は、名前を出さないことや別の名前を使うことを求められます (第10条)。同意を断ったり取り消したりしても、出演の機会やオーディションで不利に扱ってはならない、という決まりもあります (第11条)。

アニメと吹き替え、亡くなった人の声

アニメと吹き替えについて、第14条は「原則としてAIによる実演家の代替を行わないでください」と書いています。雑音を取り除く処理や、口の動きに合わせるための最小限の音の微調整は、合意の範囲で限定的に認めました。

亡くなった人の声は、第6条で原則としてAIに使わないとしています。例外は、故人が生前に出ていたシリーズで、亡くなった時点ですでに具体的な制作が始まっていた続編と、本人が生前に出演に合意していたプロジェクトに限られます。その場合も、人が代わりを務められない最小限の範囲にとどめ、遺族と所属事務所の書面の同意と、生前と同じかそれ以上の利用料が条件です。故人が関わっていない新作での利用は「一切認められません」と書かれています。

誰に向けたルールか

対象は、学習データ、学習したモデルの出力、シンセティック・パフォーマー (架空の名前で作られたAIの声や演技) までの全段階です (第4条)。AIの開発や音声の出力が日本国外で行われる場合も適用するとしました。ガイドラインの「事業者」には、個人事業主、同人の作り手、個人の配信者も含まれます (第2条3項)。

無断のスクレイピング (ネット上のデータを、プログラムで自動的に集めること) による学習、目的外の流用や第三者への提供、収録済みの演技を知らせずにAIの声へ差し替えること (サイレント差し替え)、本人の意思を確かめない政治・宗教・成人向けの利用は、第13条が「行わないでください」と並べています。一方で、正規に許諾されたAI音声を個人の配信や同人の制作で使う場合、特定の人の声をまねない汎用の読み上げソフトを個人で使う場合、群衆のざわめき (ガヤ) の一部に使う場合は、事前協議と特別損害賠償金の対象から外す例外として挙げました (第20条5項)。

違反があったときは、利用の即時停止とモデルの廃棄を求め、無断利用を始めた日にさかのぼって「当該事業の売上相当額」を特別損害賠償金として請求する、と第20条に定めています。この額の考え方は、日俳連がガイドラインの中で決めたものです。

法律との関係

日俳連は発表ページで、このガイドラインを、声を包括的に守る明文の法律がない中での自主的な基準と位置づけています。ガイドラインの前文は、著作権法第91条の「実演の録音・録画権」について、声の特徴を学んで新しい音声を作るAIには「必ずしも十分に対応できているとは言えません」と書きました。日俳連は法制化への働きかけも強めるとし、技術や法制度の変化に応じてガイドラインを改定するとしています (第22条)。

アニメやゲームを楽しむ人にとって

動画サイトでは、アニメのキャラクターの声を再現したAIに、流行りの曲を歌わせた動画を見かけることがあります。ガイドラインは、こうした声を作って公開する側も、個人の配信者が事業として行うなら対象に含め、本人の書面の同意と対価を求めています。アニメと吹き替えについては、原則としてAIで声優を置き換えないよう制作側に求めました。

まとめ(FAQ)

Q. 声優の声をAIで使うことは禁止されたのですか?
A. 条件つきで認める形です。日本俳優連合のガイドラインは、学習・生成・利用の段階ごとの本人の書面の同意と、出演料とは別の対価を条件にしています。アニメと吹き替えでは、原則としてAIで声優を置き換えないよう求めています。

Q. 亡くなった声優の声は、遺族が許せば使えますか?
A. 第6条は、原則として使わないとしています。例外は、生前に出ていたシリーズで亡くなった時点ですでに制作が始まっていた続編などに限られ、そのうえで遺族と所属事務所の書面の同意が要ります。故人が関わっていない新作での利用は「一切認められません」としています。

Q. 一度同意したら、ずっと使えますか?
A. 同意の有効期間は原則として最長1年で、無期限の同意は無効扱いです。長期のゲームやアニメの制作では、合理的な範囲で1年を超えることも認めています。

Q. 個人の配信者も対象ですか?
A. 事業として行う場合は対象です。ガイドラインの「事業者」は法人か個人かを問わず、声のAIを使って事業を行う者で、個人事業主、同人の作り手、個人の配信者も含まれます。事業者が本人の書面の許諾を得て販売しているAI音声を、個人の配信や同人の制作の範囲で使う場合は、AIで生成した旨の表示などを守れば、賠償金の対象から外れます。

検証メモ(出典と確認の範囲)
  • 日本俳優連合の発表ページ「生成AI時代における声の権利を守り、健全な業界発展を導く『音声に関する生成AI利用ガイドライン』発表」(2026年10月15日(木)) の本文と画像3枚、ガイドライン全文PDF「音声に関する生成 AI 利用ガイドライン Ver 1.0」(表紙と本文21ページの計22ページ) によります。PDFから文字を取り出すと一部の字が化けるため、表紙と、第5条・第6条のあるページは画像で字を確かめました。
  • 亡くなった人の声について、発表ページは「AI生成を行う場合は、必ず権利を継承する遺族(または管理者)の厳格な許諾を必須とする」と説明しています。本文は、これより厳しい第6条の条文に沿って書きました。
  • 第13条の禁止事項は「行わないでください」という依頼の形で書かれています。第18条の開示請求は、日俳連のガイドライン上の主張です。
  • 加盟者数「約2,600人」は発表ページの数字です。報道の人数とは照合していません。
  • 法的な拘束力がない点は、ITmedia AI+ (2026年10月16日(金)) の報道によります。
  • 一部の報道は「初めてのガイドライン」と伝えていますが、日俳連の発表ページとPDFに「初」の言葉は見当たりませんでした。この記事では使っていません。
  • 記者会見での出席者の発言は報道 (映画ナタリーなど) で伝えられていますが、日俳連の発表ページには載っていないため、この記事では取り上げていません。
  • 2026年10月17日(土) 時点の確認による情報です。

Quotidia の視点

第8条は、声を学ばせる、AIで声を作る、作品に使う、の3つを別々の同意に分けた。一度の「はい」で先の使い道まで渡してしまう形を、手続きの順番で防ぐ作りになっている。同意に原則1年の期限を付けたことで、何を許したのかを毎年確かめ直す機会も生まれる。この順番は、声優ではない人にもそのまま借りられる。動画のナレーションや店の案内放送のように、自分の声を録音して渡す場面は身近にある。そのとき、AIに学ばせるのか、ほかの文章をその声で言わせるのか、いつまで使うのかを紙で確かめておくことはできる。気になるのは、業界の外にいる作り手が、この手順にどこまで付き合うかだ。日俳連と取引のない個人の配信者にとって、ガイドラインに沿う理由は契約の形では生まれにくい。その理由が出てくるとすれば、法の読み方のほうからだ。以前の記事で取り上げた法務省の検討会は、本人の声をまねたAI音声カバーの収益化が侵害になりうるとする解釈指針をまとめている。

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