近畿大、入試の自己PR動画で生成AIを解禁。評価されるのは「どう使いこなしたか」

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近畿大、入試の自己PR動画で生成AIを解禁。評価されるのは「どう使いこなしたか」【2026年8月】

近畿大、入試の自己PR動画で生成AIを解禁。評価されるのは「どう使いこなしたか」 インフォグラフ

近畿大学が2026年7月24日(金)、2027年度の情報学部・総合型選抜で、自己PR動画の制作やプレゼンテーションの準備に生成AIを活用することを認めると発表しました。総合型選抜は旧AO入試のことで、学力試験ではなく書類・面接・プレゼンテーションなどで選抜する方式です。出願は2026年9月1日(火)に始まり、きっかけの一つは受験者からの入試でのAI利用の可否についての問い合わせだったとITmediaは伝えています。この記事の言いたいことは1つです。新しいのは「解禁」ではなく、使ったことを隠させず「活用することを認める」と入試方式の単位で明文化し、AIをどう使いこなすかまで評価の視野に入れた点です。出典と確認できた範囲は、末尾の検証メモにまとめてあります。

この記事のポイント

  • 近畿大学が2027年度の情報学部・総合型選抜で、自己PR動画の制作やプレゼンテーションの準備に生成AIを活用することを認めた。対象はアイデア出し、構成の検討、スライド作成など。出願は2026年9月1日(火)から
  • きっかけの一つは受験者からの問い合わせ。情報学部では既にAI活用の演習が導入されており、入試でのAI利用可否について質問が寄せられていたとITmediaは伝えている
  • 「日本初」ではない。東京農工大学 (農学と工学の国立大) が2024年12月18日(水)に出願書類での利用を「問わない」と公表済みで、文科省の公表資料にも容認型の募集要項の実例が載っている
  • 新しいのは線の引き方。黙認や不問ではなく「活用することを認める」と明文化し、大学側は利用方針の明示が「どのようにAIを使いこなしているのかの把握にもつながる」とする
  • 公平性のリスクは大学自身が明文化している。「生成AIを利用しない受験生が不利益を受けることがないよう、利用環境の違いにも十分配慮します」

何が、どこまで使えるのか

近畿大学のリリースは、認める範囲をこう書いています。「第1次審査の自己PR動画の制作や第2次審査のプレゼンテーションの準備において、アイデア出し、構成の検討、スライド作成などに生成AIを活用することを認め」る。ITmediaによれば、選考は自己PR動画や志望理由書などによる1次審査と、プレゼンテーションと口頭試問 (面接形式で、口頭により知識や考えを問う試験) による2次審査の2段階です。

表: どの審査で、何にAIを使えるのか

段階 中身 AIを使えると明記されたこと
第1次審査 自己PR動画や志望理由書などの書類 自己PR動画の制作 (アイデア出し・構成の検討など)
第2次審査 プレゼンテーションと口頭試問 (2026年10月24日(土)・オンライン) プレゼンテーションの準備 (スライド作成など)

対象は情報学部の総合型選抜という1学部・1方式で、提出物の制作と発表の準備の話です。試験会場でAIが使えるという話でも、学力試験の話でもありません。狙いについてリリースは、生成AIを「適切に使いこなす力は、今後、情報分野を学ぶ上で必要な能力の一つです」と説明しています。

「日本初」なのか

近畿大のリリースにも報道にも「日本初」という言葉は出てきません。実際、先行例があります。東京農工大学は2024年12月18日(水)、学部入試の出願書類 (志望理由書・活動報告書など) について「生成AIを利用して作成した内容に関する責任は、すべて出願者本人がとることとしたうえで、生成AIの利用の有無は問わないこととします」と公表しました。あわせて「生成AIの利用の有無にかかわらず、本学のアドミッション・ポリシーに基づき、公平な評価を行います」とも書いています。アドミッション・ポリシーとは、大学が公表する入学者受入方針のことです。

国も、入試でのAIを一律に禁じていません。文部科学省の公表資料「大学入学者選抜における生成AIの取扱いについて」は、各大学が教学面の方針と整合する適切なルールを策定・運用することを期待すると書き、出願時の取り扱いを募集要項などに示す方法を例示しています。同じ資料には、大学名を伏せた実例が並んでいます。

表: 大学の生成AIルールはどう分かれているか

募集要項などの書き方 大学
認める 「アイデア出し、構成の検討、スライド作成などに生成AIを活用することを認め」る 近畿大学 (2027年度・情報学部の総合型選抜)
問わない 「生成AIの利用の有無は問わないこととします」 東京農工大学 (2024年12月公表)
影響させない 「生成AIの利用の有無が評価結果に影響を与えないようにします」 文科省資料のA大学 (実名は伏せられている)
認めない 「生成AIによって生成されたものを受験生独自の成果物とは一切みなしません」 同資料のB大学

「問わない」と「認める」の違いは、使ったかどうかを不問に付すか、使いこなし方まで評価の視野に入れるかです。容認そのものは、2024年の時点で複数の実例があるわけです。近畿大の新しさは、利用を黙認したり有無を問わないことにしたりするのではなく、「活用することを認める」と入試方式の単位で明文化したことにあります。大学側も、利用方針を明示することで、受験者が「どのようにAIを使いこなしているのかの把握にもつながる」としています (ITmedia)。

認めると書いた側は、何を心配しているのか

まず公平性です。リリースは「生成AIを利用しない受験生が不利益を受けることがないよう、利用環境の違いにも十分配慮します」と一行を割いています。使いこなす力を見る以上、AIを使える環境と使えない環境の差が提出物の差につながりうる。その懸念を、大学自身が発表文の中に書き込んでいます。

次に、提出物が本人の成果かという問題です。ここは文科省資料の実例が最も直接的です。B大学は「生成AIによって生成されたものを受験生独自の成果物とは一切みなしません」。同じ資料にはもう1例あり、C大学は「不正が疑われたり、入学後に学修上のミスマッチが起きたりしないよう、自らの責任において十分に考えたものを提出してください」と注意を促しています。同じ国の中で、正反対の線が同時に引かれています。

虚偽については、ITmediaによれば近畿大は「虚偽を記載した提出物は受理しない」とし、選考ではAIの利用の有無にかかわらず、受験者の能力や思考、独自性を重視するとしています。そして制度の設計。第2次審査に置かれているのは、プレゼンテーションと口頭試問です。AIと作った提出物を、最後は自分の言葉で説明する場面が、選抜の中に組み込まれています。

受験生と家庭は、何を確認すればいいのか

大学入試でのAIの扱いは、大学ごと・方式ごとに違います。「認める」「問わない」「認めない」が併存しており、同じ作り方をした提出物が、ある大学では評価の材料になり、別の大学では独自の成果物とみなされない可能性があります。文科省が例示している置き場所は募集要項です。志望校の要項に生成AIの記載があるかどうかを、出願前に確認するのが確実です。

近畿大学情報学部の総合型選抜を受ける場合の日程は次のとおりです。

表: 近畿大の総合型選抜 (情報学部) はいつ何があるか

日付 何がある
2026年9月1日(火)〜9月12日(土) 出願
2026年10月9日(金) 第1次審査の合否発表
2026年10月24日(土) 第2次審査 (プレゼンテーションと口頭試問・オンライン)
2026年11月7日(土) 第2次審査の合否発表

記事公開の時点で、出願開始まで1か月を切っています。この入試で問われるのは、AIを使ったかどうかではありません。使ったことを隠さずに、どう使ったかまで含めて自分の言葉で見せられるか。近畿大が明文化したのは、その線です。

まとめ(FAQ)

Q. 入試でのAI容認は近畿大が日本初?
A. 近畿大のリリースにもITmediaの記事にも「日本初」という言葉はありません。東京農工大学が2024年12月18日(水)に出願書類での生成AIの利用を「問わない」と公表済みで、文科省の資料には「利用の有無が評価結果に影響を与えないようにします」と募集要項に明記した大学の例も載っています。

Q. 志望理由書もAIで書いていい?
A. リリースが名指しているのは「自己PR動画の制作」と「プレゼンテーションの準備」(アイデア出し、構成の検討、スライド作成など) です。第1次審査の提出物には志望理由書などの書類も含まれるとITmediaは伝えていますが、志望理由書そのものへのAI利用の可否はリリースの文面からは読み取れません。募集要項での確認をおすすめします。

Q. 近畿大の入試ぜんぶで使える?
A. いいえ。2027年度の総合型選抜 (情報学部) という1学部・1方式の話です。試験会場でAIを使えるという話でもありません。

Q. AIを使わないと不利になる?
A. リリースは「生成AIを利用しない受験生が不利益を受けることがないよう、利用環境の違いにも十分配慮します」と明記しています。またITmediaによれば、選考ではAIの利用の有無にかかわらず、受験者の能力や思考、独自性を重視するとしています。

Q. AIが作ったものをそのまま出してもいい?
A. ITmediaによれば「虚偽を記載した提出物は受理しない」とされています。また第2次審査にはプレゼンテーションと口頭試問があり、提出物の中身を自分の言葉で説明する場面が制度に組み込まれています。

Q. なぜ大学はわざわざ認めた?
A. 情報学部では既にAI活用の演習が導入されており、受験者から入試でのAI利用可否について問い合わせがあったとITmediaは伝えています。リリースは、生成AIを「適切に使いこなす力は、今後、情報分野を学ぶ上で必要な能力の一つです」と説明しています。

検証メモ(出典と確認の範囲)
  • 一次資料: 学校法人近畿大学のプレスリリース (@Press配信・2026年7月24日(金))。近畿大学公式サイト上の同一リリースの掲載は未確認ですが、配信元が学校法人近畿大学であることは確認済みです。
  • 報道: ITmedia AI+「近畿大、入試にAIの利用認める 情報学部の総合型選抜で」(2026年7月24日(金))。「虚偽を記載した提出物は受理しない」「AIの利用の有無にかかわらず、受験者の能力や思考、独自性を重視する」の2点はITmediaの記事で確認した内容です。このうち「虚偽を記載した提出物は受理しない」は、リリース原文に該当文言が無いことを@Press・newscastの2経路で確認済みで、本文ではITmediaの記述として帰属しています。一方、リリース原文には「受験生自身の能力や思考、独自性を重視するとともに」という文言が存在することを確認済みです。
  • 公平性についてリリースが書いているのは「生成AIを利用しない受験生が不利益を受けることがないよう、利用環境の違いにも十分配慮します」までで、「利用環境の違い」の中身 (端末や有料サービス、家庭の事情など) は具体化されていません。本文の記述もこの言葉の範囲に留めています。
  • 文部科学省「大学入学者選抜における生成AIの取扱いについて」: PDF全文を確認。大学名を伏せた対応例 (A大学・B大学・C大学) の引用はこの資料の逐語です。資料の正式な発出日は親文書を確認できていないため、本文では特定していません。
  • 東京農工大学「出願書類における生成AIの取扱いについて」(2024年12月18日(水)掲載): 公式ページで本文を確認済みです。
  • 「近畿大学情報学部は2022年新設」という情報は今回の出典では確認できなかったため、本文では使っていません。

Quotidia の視点

この制度でQuotidiaが一番おもしろいと思うのは、出自です。禁止の通達として降りてきたのではなく、受験生側の照会に大学が答える形で生まれています。訊いた側は白か黒かを知りたかっただけかもしれませんが、大学は白と答えたうえで、評価の置き場所を動かしました。提出物がAI製か人力かを見張るのではなく、どう使いこなしたかを見ると言っている。これは採点する側にとって楽な設計ではありません。使い方の申告は本人に頼る部分が残り、使いこなしの巧拙を測る物差しは、プレゼンテーションと口頭試問の側に置かれることになります。そしてリリースの中で一番重いのは、この一句だと思います。「利用環境の違いにも十分配慮します」。使いこなす力を選抜で見るなら、AIを使い込める環境のある受験生とない受験生の差は、入試の外側の事情ではなく内側の問題になります。近畿大は配慮すると書きました。どう配慮するのかは、まだ書かれていません。2026年9月1日(火)の出願開始までに募集要項がその中身をどこまで具体化するかが、この発表の次の確認点です。

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