音声ストーリーの「Pocket FM」、AI制作93%で年間換算売上が1年で2.5億ドルから5億ドルに倍増

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音声ストーリーの「Pocket FM」、AI制作93%で年間換算売上が1年で2.5億ドルから5億ドルに倍増【2026年9月】

音声ストーリーの「Pocket FM」、AI制作93%で年間換算売上が1年で2.5億ドルから5億ドルに倍増 インフォグラフ

インドの音声ストーリー配信 (連載形式の物語を音声で配信するサービス。続きを聴くために課金する仕組みが多い) の会社「Pocket FM」で、ランレート (年間換算売上) が、1年前の約2.5億ドルから5億ドルに倍増したことが分かりました。ランレートは、直近の売上ペースを12か月分に引き伸ばした見込みの数字です。CEO兼共同創業者のRohan Nayak氏が、TechCrunchのインタビュー (現地時間2026年9月10日(木)) で説明したものです。同社はカタログ全体の93%、新作の99%をAIで制作しており、会社側の説明では制作費は約80分の1に下がり、100時間分のコンテンツを作る期間は約1年から1日に縮みました。一方でNayak氏は、物語の発案と長く残るIP (知的財産) は人が担い、AIは完成品への製造を担う、と役割を分けて語っています (一次資料はTechCrunchのCEOインタビュー・数字は会社側の説明)。AIを使って作った物語を、2.5億人超が聴いている。その規模と、人が残っている場所の両方を、数字で確かめていきます。

この記事のポイント

  • Pocket FMのランレート (年間換算売上) が1年で約2.5億ドルから5億ドルに倍増 (2026年4月時点は4.3億ドル。CEOがTechCrunchに説明)
  • カタログ全体の93%、新作の99%をAIで制作。会社側の説明では制作費は約80分の1、100時間分の制作期間は約1年から1日へ
  • 役割分担は「発案は人、製造はAI」。Nayak氏は「100年残るIPを作りたい。それには人が要る」と語り、AIは台本の展開や音声化を担う
  • 利用者は2.5億人超・20か国超、売上の約70%は米国。12か月売上維持率は2年前の44%から76%に上がった
  • 5億ドルは「年間換算」の数字。直近のペースを12か月に引き伸ばした見込みで、年間の実績売上とは別の数字です

何が起きたのか

Pocket FMは2018年創業のインドの会社で、連載形式の音声物語を配信しています。TechCrunchのインタビューによると、同社のランレートは1年前の約2.5億ドルから、2026年4月に4.3億ドル、そして現在は5億ドルに達しました。売上の内訳は、利用者からの課金が約4.15億ドル、広告が約8,500万ドルです。

派生サービスも動いています。動画版の「Pocket Saga」は開始から3か月で、ランレートが約1,500万ドル。こちらは100% AI生成だと同社は説明しています。

TechCrunchによると、伸びの背景にはAI活用のほか、英国・ドイツ・フランスへの進出と米国でのユーザー投稿コンテンツの開始もあります。

一日で100時間分。制作の速さと費用

Nayak氏の説明で目を引くのは、制作の側の数字です。同社はカタログ全体の93%、新作に限れば99%を、AIを使って制作しています。会社側の説明では、制作費は以前の約80分の1になり、100時間分のコンテンツを作るのにかかる期間は、約1年から1日に縮みました。

規模も、この速さの上に成り立っています。55万人超のクリエイターが、年に250万時間分のAI制作コンテンツを生み出しています。2年前にはカタログ全体で約10万時間でした。ライブラリは77万シリーズ超に達しています。作品ごとの売上が100万ドルを超えたものは96本、1,000万ドル超は13本あります。

ここで押さえておきたいのは、93%や99%が「AIを使って制作した比率」であることです。人の関与がない比率、という意味とは異なります。

発案は人、製造はAI。CEOが語る役割分担

Nayak氏は、人間が物語の発案と長期のIPを担い、AIが完成品への製造を担う、と役割を分けて説明しています。「100年残るIPを作りたい。それには人が要る」というのが本人の言葉です。台本を展開して音声にする工程をAIに任せ、何を語るかを決める部分に人を置く、という分担です。

そのための道具も自前です。同社は創作用のテキスト生成と音声合成のモデルを自社で訓練している、と説明しています。

誰が聴いているのか

利用者は2.5億人超で、20か国超に広がっています。売上の約70%は米国からで、米国は前年比で約70%伸びました。インドの会社ですが、売上で見れば聴き手の中心は米国にあります。

聴き続けている人の割合も上がっています。12か月売上維持率 (1年前に払っていた利用者の売上が、今年どれだけ残っているかの割合) は、2年前の44%から76%に上昇しました。続きを聴くために課金する仕組みのサービスにとって、この数字は物語が飽きられていないことの目安になります。

数字の読み方 (年間換算と、会社側の説明)

「売上5億ドル」と見出しにしたくなる数字ですが、正しくはランレート (年間換算売上)、つまり直近の月次売上を12倍して年間に引き伸ばした見込みの数字です。実際に1年間で5億ドルを売り上げた、という実績とは区別して読む必要があります。

もう一つ、この記事に出てくる数字は、倍増も、93%も、80分の1も、すべてCEOの説明をTechCrunchが報じたものです。監査済みの決算のように第三者が確かめた数字とは別のもので、勢いを示す会社側の数字として受け取るのが安全です。

日本の読者にとっての意味

連載の形で物語を届ける仕事、たとえばオーディオブックやボイスドラマ、縦読み漫画の制作現場から見ると、まず目に入るのは制作の速さと費用の桁でしょう。100時間分が1年から1日へ、制作費が約80分の1へ。会社側の数字ではあっても、同じ構図が日本の制作現場にも来うると考える材料にはなります。見るべき点は二つあります。

一つ目は、その構図の中身です。Pocket FMが人に残したのは、何を語るかを決める発案と、長く育てるIPでした。台本の展開や音声化といった製造の工程がAIに移っても、物語を思いつく人の席は残っています。日本の現場で同じことが起きるとすれば、増えるのは製造の量で、差がつくのは発案の側です。

二つ目は、聴く側の視点です。続きを聴くために課金する仕組みの上で、2.5億人が待っているのは、作り手の名前ではなく、明日の続きです。作り手がAIを使ったかどうかを、聴き手の耳が判定する場面は多くないでしょう。作る側に残るのは、その耳に何を届けるかを決める席です。

まとめ(FAQ)

Q. Pocket FMの売上は5億ドルですか?
A. 5億ドルはランレート (年間換算売上) で、直近の売上ペースを12か月分に引き伸ばした見込みの数字です。1年間の実績売上とは別物で、CEOがTechCrunchに説明した会社側の数字です。

Q. 物語はすべてAIが作っているのですか?
A. AIを使って制作した比率がカタログの93%、新作の99%です。CEOの説明では、物語の発案と長期のIPは人が担い、AIは台本の展開や音声化といった製造を担っています。

Q. どこで聴かれているのですか?
A. 利用者は2.5億人超・20か国超で、売上の約70%は米国です。米国は前年比で約70%伸びています。

Q. 日本のオーディオブックやボイスドラマにも影響しますか?
A. 発案は人、製造はAIという構図は、日本の制作現場にも来うるものです。ただし今回の数字はインドの一社の、会社側の説明にもとづくもので、日本の市場で同じ比率になるかどうかは別の話です。

検証メモ(出典と確認の範囲)
  • 本記事の数字と発言は、TechCrunchによるPocket FM CEO Rohan Nayak氏のインタビュー (現地時間2026年9月10日(木)・日本時間では9月11日(金) 未明の掲載) に基づきます。Yahoo Financeの再掲 (同文) とtbreakの要約 (93%・5億ドル・2.5億人) で一致を確認しています。
  • ランレート (年間換算売上) は直近の月次売上を12倍した見込みの数字で、年間の実績売上とは別です。倍増 (約2.5億ドル→5億ドル)、93%/99%、約80分の1、100時間分が約1年→1日、利用者2.5億人超、売上の約70%が米国、売上維持率44%→76%は、いずれも会社側 (CEO) の説明で、監査済みの決算とは別のものです。
  • 役割分担 (発案・物語・長期IPは人、完成品への製造はAI) と「100年残るIPを作りたい。それには人が要る」はNayak氏の発言です。
  • 日本語の一般媒体による報道は、2026年9月14日(月) 時点でほぼありません。
  • 日付は日本時間で記載しています。掲載日 (2026年9月18日(金)) 時点の情報です。

Quotidia の視点

耳で聴く物語を、一日に100時間分作る会社がある。インドのPocket FMは、カタログの93%をAIで作り、年間換算の売上を1年で5億ドルへ倍にしたと説明している。まず、この5億ドルは直近の勢いを12か月に引き伸ばした見込みの数字で、監査を通った決算とは別のものだ。会社の説明として受け取っておく。そのうえで、この話の芯は数字の大きさより、CEOが引いた線のほうにある。何を語るかを思いつくのは人で、台本を膨らませて声にするのは機械。100年残る話には人が要る、と本人が言っている。製造が機械に移ったあとに人がどこに残るか、という問いに、一社が事業の数字で出した答えがこれだ。ただ、この線は作る側の都合で引かれている。聴く側の耳には、発案が誰で、製造が何だったかは書いていない。2.5億人の耳が向いているのは、作り手の名前にではなく、明日の続きだ。作る仕事をしている身には、少し落ち着かない話でもある。三日かけて書いたものと、一日で百時間分できたものが、聴く側では同じ棚に並ぶ。それでも、その棚に何を置くかを決める席は、まだ人の側にある。その席に座り続けるために何が要るのかまでは、この会社の数字には出てこない。

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