文章を書かないAI「Jev」、発表から10日で日本の採用AIに組み込まれた
文章を書かないAI「Jev」、発表から10日で日本の採用AIに組み込まれた【2026年9月】

フォワード (東京都新宿区) は2026年9月25日(金)、自社の採用AI「エースジョブ」に、米TypeSafe AIのAIモデル「Jev」を導入したと発表しました。Jevの発表 (米国時間9月15日(火)) から10日後のことです。Jevは文章を書きません。あらかじめ用意した選択肢から1つを選び、その答えがどのくらい確かかを確率の数字で添えて返すAIです。フォワードは、それまで大規模言語モデル (LLM・文章を読んだり書いたりするAI) で行っていた判定をJevに移し、LLMとは組み合わせて使うと説明しています。
Jevの発表を伝えたX投稿は3,963万回表示されました (2026年9月26日(土)時点)。一方で、TypeSafe AIは米国時間9月21日(月)から新規登録を一時停止しており、2026年9月27日(日)時点で再開の告知は確認できていません。
この記事のポイント
- フォワードが9月25日(金)、採用AI「エースジョブ」の判定部分にJevを導入。判定はLLMからJevに移し、LLMは基準の整理などで併用。導入による効果の数字は発表に含まれていない
- Jevは文章を書かず、用意した選択肢から選んで確率を返す。質問の形はChoice / Score / Noulの3種類で、入力はテキストのみ
- 料金は入力100万トークン (AIが文章を区切って数える単位) あたり0.042ドルで、出力は無料 (TypeSafe AIの公表値)
- 「幻覚しない」は「選択肢の外の答えを出さない」という意味。選択肢の中で間違えることはあり、TypeSafe AI自身が弱点を9項目挙げている
- 日本語を含むCJK (中国語・日本語・韓国語) は英語と同等ではないとTypeSafe AIは明記。新規登録は米国時間9月21日(月)から一時停止中
フォワードは判定をJevに任せた
フォワードは2026年9月25日(金)、PR TIMESでJevの導入を発表しました。代表はコメントで、「Jevによる判定と大規模言語モデルによる学習を組み合わせ」ると説明しています。リリースが挙げる用途は、候補者と求人のマッチ度判定です。文章を書くLLMを外したわけではなく、判定の部分をJevに受け持たせ、LLMと並べて使う形です。
発表には、導入で何がどれだけ変わったかの数字はありません。Jevの速さについては、フォワードも開発元の公表値として紹介しています。
Jevとは: 文章を書かずに「選ぶ」AI
Jevは、TypeSafe AIが米国時間2026年9月15日(火)に発表したAIモデルです。状況を書いたテキストと質問を受け取り、答えの型が先に決まった回答と、その確率を返します。文章やコード、推論の説明は出力しません (TypeSafe AIのドキュメント)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入力 | テキストのみ (画像・音声・動画は入らない) |
| 出力 | 型の決まった答えと確率。文章は出さない |
| 質問の形 | Choice / Score / Noul の3種類 |
| 料金 | 入力100万トークンあたり0.042ドル、出力は無料 |
トークンは、AIが文章を処理するときの単位です。3種類の質問は次のとおりです。
- Choice: 用意した選択肢から1つを選ぶ (例: 問い合わせを請求・技術・アカウントのどの担当に回すか)
- Score: 段階を決めた尺度で採点する (例: 0 = 落ち着いている / 1 = 不満 / 2 = 強い不満)
- Noul: はい・いいえで答える問いの「はい」の確率を返す (例: 返金を求めているか)
TypeSafe AIはブログで、手書きのルールでは硬すぎる分岐 (分類・振り分け・採点・抽出) に差し込む使い方を「smart if-statements」(賢いif文) と呼んでいます。何を選択肢にするかと、選んだ答えで次に何をするかは、使う側のプログラムが決めます。
発表ブログを書いたDiogo Almeida氏は元OpenAIで、InstructGPTの論文の共著者の一人です。同氏はTechCrunchとポッドキャストLatent Spaceのインタビューで、学習データはすべて自社で作った合成データだと話しています。
「幻覚しない」の意味
ハルシネーションは、AIが事実でない内容をもっともらしく作ってしまう現象です。TypeSafe AIはブログで、Jevは文章の生成をあきらめる代わりに構造化された出力に絞っており、「can’t hallucinate」(幻覚できない) と書いています。根拠として挙げているのは、答えの型と選択肢を先に決めるので、型の誤りが起きないことです。
「幻覚しない」は「選択肢の外の答えを出さない」という意味で、選択肢の中で間違えることはあります。TypeSafe AIは自社のドキュメントで、Jevの弱点を9項目挙げています。
- 文字どおりに読む
- 計算や数を数えるのが苦手
- 日付の前後比較が苦手
- 間接的な問いに弱い
- 無関係な情報が多いと精度が落ちる
- 意図的に誘導する文や埋め込まれた指示に答えが動く
- 指示と判定基準が食い違うと混乱することがある
- 同じ意味の問いで確率の辻褄が合わないことがある
- 文章の生成には向かない
確率0.8は「10回のうち8回ほど当たる」という目安で、目の前の1件が正しいという保証ではありません。TypeSafe AIのドキュメントも、確率は多数の予測をまとめたときの割合を表すと書いています。
10日で広がった範囲
| 場所 | 数字 |
|---|---|
| Almeida氏のX投稿 (発表) | 表示3,963万 |
| Hacker News (開発者向け掲示板) の公式ブログ投稿 | 1,981点 |
| VercelのAI Gateway | 最初の24時間で有料チームの約13%が利用 |
(X投稿の表示とHacker Newsの点数は2026年9月26日(土)時点。AI GatewayはVercel公式ブログ)
AI Gatewayは、Vercelが開発者向けに提供する、複数のAIモデルを呼び出すためのサービスです。TechCrunchによると、VercelのPranit Sharma氏は、それまで使っていたモデルをJevに替えて5〜18倍速くなったと話しています。同じ記事で、Jevを使う企業BryoのCTOは、Geminiのほうが精度はわずかに高かったものの、費用は10〜20倍かかったと話しています。
新規登録は一時停止中
TypeSafe AIは米国時間9月20日(日)に待機リストをなくし、翌21日(月)には、需要が急増したとして新規登録を一時停止しました (公式X)。既存のアカウントは引き続き使えます。2026年9月27日(日)時点で、再開の告知は確認できていません。TypeSafe AIへの直接の登録は止まっていますが、JevはVercelのAI Gatewayなどの外部サービスからも呼び出せます。ただし、いずれも開発者がプログラムから呼び出す使い方です。
日本で使う人にとっての意味
TypeSafe AIはドキュメントで、英語が主な学習言語で最も精度が高く、日本語を含むCJKも扱えるものの英語と同等ではないとして、自分のデータで試してから使うよう求めています。
フォワードの導入は、日本のサービスがJevを判定の部品として組み込んだ例です。問い合わせの振り分けや、はい・いいえで分かれる判定のように、答えの候補を先に書き出せる仕事では、答えを段落で受け取るより、選択肢と確率で受け取るほうがプログラムで扱いやすくなります。日本語での精度は、使う側が自分の問い合わせで確かめることになります。
まとめ(FAQ)
Q. Jevは間違えないAIですか?
A. 違います。TypeSafe AIの言う「幻覚しない」は、選択肢の外の答えを出さないという意味です。選択肢の中で間違えることはあり、同社は弱点を9項目公表しています。
Q. Jevはいま使えますか?
A. TypeSafe AIは米国時間9月21日(月)から新規登録を一時停止しています。2026年9月27日(日)時点で再開の告知は確認できていません。既存のアカウントは使えます。JevはVercelのAI Gatewayなどの外部サービスからも呼び出せます。
Q. Jevは日本語に対応していますか?
A. 日本語も扱えますが、TypeSafe AIは日本語を含むCJKについて英語と同等ではないと明記し、自分のデータで試してから使うよう求めています。
Q. フォワードはLLMをやめたのですか?
A. やめていません。判定はLLMからJevに移しましたが、代表はコメントで、Jevによる判定と大規模言語モデルによる学習を組み合わせると説明しています。
検証メモ(出典と確認の範囲)
- フォワードの導入は、同社のPR TIMESのリリース (2026年9月25日(金)) によります。リリースに記載のある「250社超」「返信率2倍」はエースジョブの既存の実績で、Jev導入の効果ではないため使っていません。
- 「発表から10日」は、Jevの発表日 (米国時間2026年9月15日(火)・日本時間では9月16日(水)) から、フォワードの発表日 (日本時間2026年9月25日(金)) までを、米国時間の発表日から数えた日数です。
- Jevの仕様 (入出力・質問の3種類・料金・日本語についての注記) は、TypeSafe AIの公式ブログ (2026年9月15日(火)) とドキュメント (docs.typesafe.ai) によります。弱点9項目はドキュメントの「Jev 1.13」のページ (最終確認 2026年9月17日(木)) の自己申告です。
- 「can’t hallucinate」の根拠は答えの型を先に決めることで、ブログに載る幻覚率0%の図は実測ではないとTypeSafe AI自身が注記しています。
- TypeSafe AIは自社の業務フロー評価で速さと安さの倍率も示していますが、評価は社内チームが作ったもので実際の効果の上限寄りだと同社自身が注記しているため、使っていません。
- 約13%はVercel公式ブログ (2026年9月18日(金)) によります。「5〜18倍速い」とBryoの比較は、TechCrunch (2026年9月18日(金)) の取材での引用で、元の発言そのものは確認できていません。
- 表示3,963万 (X) と1,981点 (Hacker News) は、2026年9月26日(土)に取得した値です。
- Almeida氏は、InstructGPTの論文 (arXiv 2203.02155・2022年3月4日(金)投稿) の著者20人の一人です。TypeSafe AIのチームページや本人の投稿にある、より広い経歴の表現は自己申告のため採っていません。
- 「学習データはすべて合成データ」は、ブログ本文には記載がなく、Almeida氏のインタビューでの発言 (TechCrunch 2026年9月18日(金) / Latent Space 2026年9月21日(月)) によります。顧客のデータで学習しないことはドキュメントに記載があります。
- 新規登録の一時停止は、TypeSafe AIの公式Xの投稿 (米国時間2026年9月21日(月)) によります。2026年9月26日(土)に確認した公式サイトのトップには、サインインと営業問い合わせの導線だけがありました。再開の告知が見つからないことは、再開していないことを意味しません。
- The Information (米国時間2026年9月24日(木)) が、TypeSafe AIが評価額100億ドル超で10億ドル超の調達を協議中だと報じています。関係者の話による報道で未確定のため、本文では扱っていません (TypeSafe AIの確認は見つかっていません)。
- 名前の似た第三者のサイトが多数あります。TypeSafe AIの公式サイトは typesafe.ai / docs.typesafe.ai / console.typesafe.ai です。
- 日付は「米国時間」と明記した箇所を除き日本時間で記載しています。掲載日 (2026年9月30日(水)) 時点の情報です。
Quotidia の視点
Jevがこの10日で注目を集めたのは、振り分けや判定の仕事の多くが、もともと作文を必要としていなかったからだろう。そこで欲しいのは、どちらへ進むかと、それをどこまで信じてよいかの二つで、長い説明は後から人が読むものだった。フォワードが文章を書くモデルを残したまま、判定だけを切り出したのも、その分け方に沿っている。日本の職場に持ち込むなら、先に決めるべきはモデルより選択肢のほうだ。答えの候補を書き出せない仕事には、この種のAIは入り込めない。一方で、確率の目盛りが日本語でも同じように当たるかは、TypeSafe AI自身が保証していない。0.8と出た答えが日本語の問い合わせで本当に8割当たるのかは、使う側が数えて確かめるまで分からない。
関連記事:
- Geminiで立てた登山計画を過信、ハイカー3人が遭難し救助。郡保安官「計画をAIだけに頼るな」(Geminiで立てた登山計画を確かめずに使い、ハイカー3人が遭難した回。あちらは文章で返ってきた答えをどこまで信じるかの目安がなかった話、今回は答えに確かさの数字を添えて返すAIの話で、同じ「AIの答えをどこまで信じるか」を反対側から扱う)
- 文京区のクリニックが院内ローカルLLMを自作、機材はMac Studio。ベンダー経由なら初期400万円から、保守は月30万円から(文京区のクリニックが院内でローカルLLMを自作した回。あちらは日本の現場が文章を書くAIを丸ごと自前で持った話、今回は日本のサービスが判定の部分だけを外のAIに任せてLLMと並べた話で、AIの組み込み方の粒度が違う)
旗の色

旗は、決められたことしか言えない。
火曜の夕方、区民体育館のプールで千メートル泳いだ。二十五メートルを二十往復で、最後の二往復になると、いつも数があやしくなる。更衣室で髪を拭きながら、昼に読みかけた記事を携帯で開き直した。
新宿のフォワードという会社が、先週の金曜、採用の AI「エースジョブ」に「Jev」という AI を組み込んだと発表していた。Jev はアメリカの TypeSafe AI という会社が九月十五日に出したもので、フォワードが組み込んだのは、その十日後になる。Jev は文章を書かない。こちらが先に用意した選択肢から一つを選び、それがどれくらい確かかを数字にして返す。問い合わせを請求の係へ回すか、技術の係へ回すか。そういう分かれ道に置いて使うものらしい。作った会社は「幻覚しない」と書いている。選択肢の外へは答えがはみ出さない、というほどの意味で、選んだ一つが外れることはある。日本語は英語と同じ出来ではない、とも会社自身が断っていた。発表の投稿は四千万回近く表示された。フォワードは、文章を書く AI にさせていた判定を Jev に移し、文章を書く AI もそのまま使うという。
二階の武道場の前を通ると、引き戸が開いていた。子どもの稽古はもう終わっていて、壁際に小さな防具が十二組、面を上に向けて並べてある。胴の色は、黒が八つ、赤が四つ。大人が六人残り、審判の練習をしていた。三人が試合場を三角に囲んで立ち、三人とも、赤い旗と白い旗を一本ずつ持っている。天井近くの明かり取りから西日が入って、床の白線の上まで届いていた。
背中に赤と白の目印を付けた二人が、ほとんど同時に面を打った。旗が上がる。正面の主審と奥の副審は赤。手前の副審だけが白だった。
「面あり」と主審が言い、手前の副審は白い旗をゆっくり下ろした。
休憩になると、その副審が見学のベンチに来て、僕の隣に座った。大学生くらいの若い男で、旗の竿に巻いたテープがほどけかけている。彼はそれを巻き直しはじめた。
「白に見えた?」と僕は訊いた。
「見えました」と彼は言った。「ほかの二人には、赤だったみたいです」
「一本じゃない、と思ったときは?」
「下で振るんです。認めない、っていう合図で。旗でできるのは、それくらいです。でも、さっきは白に見えた」
テープの端を、彼は歯で切った。
「旗って、どのくらい自信があったかは出ないんですよ」と若い男は言った。「九割でも、半分でも、同じ高さに上がる」
彼は巻き終えた竿を膝に置いた。「この旗、洗うと赤が白に移るんです。だから別々に洗う」
「別々に洗っても?」
「少しは移ります」と言って、白い旗の端をつまんで見せた。そこだけ、かすかに桃色だった。
「泳いできたんですか」と、今度は彼が僕の濡れた髪を見て訊いた。
「千メートル。たぶん」
昼は、仕事で AI に一つ訊いていた。ある数字の出どころが役所の資料かどうか。返ってきたのは三段落で、使えるとも使えないとも、はっきりとは書いていなかった。三段落目の終わりには、念のため確認をおすすめします、とあった。先週は、そういう三段落を十四通り受け取り、使ったのは九つだった。
ベンチで、Jev を試す画面を探してみた。新しい登録は止まっていた。使いたい人が急に増えすぎたので一時的に止める、とアメリカの日付で二十一日に会社が書いていて、再開の日付は添えられていない。フォワードの発表にも、組み込んでどう変わったかの数字は載っていなかった。Jev のことを書いたものはいくらでも読めるのに、僕はまだ一度も触れられずにいる。
休憩が終わり、若い男は手前の角に戻った。二人が竹刀を合わせ、今度は白い目印の方が小手を打った。旗が三本、そろって白に上がった。彼の白も、ほかの二本と同じ高さだった。
「小手あり」と主審が言った。三本の旗が、同じ速さで下りた。手前の彼だけが、下ろしたあとで一度、白い旗の端に目をやった。
六時に練習が終わった。彼は赤い旗と白い旗を別々に巻いて、別々の袋に入れた。
フォワード、採用AI「エースジョブ」に米TypeSafe AIの「Jev」を導入。発表から10日、選択肢から選び確率を返すAI
フォワード (東京都新宿区) は2026年9月25日(金)、採用AI「エースジョブ」に米TypeSafe AIのAIモデル「Jev」を導入したと発表した (PR TIMES)。Jevは米国時間2026年9月15日(火)に発表されたモデルで、文章を生成せず、あらかじめ用意した選択肢から1つを選んで確率を添えて返す。質問の形はChoice / Score / Noulの3種類で、入力はテキストのみ。料金は入力100万トークンあたり0.042ドルで、出力は無料 (TypeSafe AI)。フォワードは判定を大規模言語モデルからJevに移し、代表コメントで「Jevによる判定と大規模言語モデルによる学習を組み合わせ」ると説明しており、導入効果の数字は示していない。TypeSafe AIはJevを「can't hallucinate」と説明するが、これは選択肢の外の答えを出さないという意味で、選択肢の中の誤りはありうる。同社はドキュメントで弱点9項目を自ら挙げ、日本語を含むCJKは英語と同等ではないと明記している。Vercelの公式ブログによると、同社のAI Gatewayでは最初の24時間に有料チームの約13%がJevを利用した。発表を伝えたX投稿の表示は3,963万 (2026年9月26日(土)時点)。新規登録は米国時間9月21日(月)から一時停止しており、2026年9月27日(日)時点で再開の告知は確認されていない。Vercel AI Gatewayなど外部サービス経由では呼び出せる。一次資料はTypeSafe AIの公式ブログ (2026年9月15日(火)) とフォワードのリリース (2026年9月25日(金))。
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