文京区のクリニックが院内ローカルLLMを自作、機材はMac Studio。ベンダー経由なら初期400万円から、保守は月30万円から
文京区のクリニックが院内ローカルLLMを自作、機材はMac Studio。ベンダー経由なら初期400万円から、保守は月30万円から【2026年9月】

東京都文京区の本郷真砂ハートクリニック (内科・循環器内科・漢方内科) が、院内に設置したAIサーバーで診療情報を処理していることを、公式サイトに2026年9月16日(水)付で掲示しました。使っているのはローカルLLM (インターネット上のAIサービスに送らず、自分の建物の中の機械で動かす文章AI) で、掲示には「ChatGPT等の外部AIサービスへ患者様の情報が送信・流出することはありません」「希望されない場合は、受付までお申し出ください」とあります。この掲示をXで紹介した投稿は59万回超表示され、「医療機器に比べたら安いのかも」という反応が付きました (一次資料はクリニック公式サイトの掲示とITmediaの取材記事)。
ITmediaの取材によると、環境を組んだのは院長本人で、機材はAppleのMac Studio (据え置き型のパソコン。メモリを大きく積める機種はローカルAIの動作に使われる) で、ITmediaは最安構成の価格として約42万円を挙げています。同じ記事が医療向けのローカルLLMを提供するベンダー (医療向けにAIシステムを販売・保守する業者) に取材したところ、初期費用は約400万円から、保守は月額約30万円からでした。「医療機器より安い」が成り立つのは、院長が自分で組んだ場合の機材費の話です。その差がどこから来るのかを、数字で確かめていきます。
この記事のポイント
- 文京区のクリニックが、院内のAIサーバー (ローカルLLM) で診療情報を処理していると公式サイトに掲示 (2026年9月16日(水)付。外部AIには送らない・希望しない患者は受付で申し出ればよい、と明記)
- 環境を組んだのは院長本人で、機材はAppleのMac Studio (ITmediaの取材。記事は最安構成で約42万円、上位構成で約95万円からと記載。クリニック公式サイトの機種表記はM3 Ultra)
- 用途は過去の診療情報の要約と、音声認識を使ったカルテ作成の補助 (院長の説明。文書を作る作業を助ける使い方)
- ベンダー経由なら初期費用400万円から・保守月額30万円から (ITmediaがGENSHI AIに取材。カスタマイズで初期約1,000万円の可能性)
- 「医療機器より安い」は、自分で組める人の機材費の話。ITmediaの結論はベンダー経由では「安いとはなかなかいえない」
何が起きたのか
きっかけは、クリニックの公式サイトにある一枚の掲示です。本郷真砂ハートクリニックは2026年9月16日(水)付で、「診療の質向上と業務効率化のため、院内に設置したAIサーバー(Local LLM)を利用して診療情報の処理を行っています」と告知しました。処理は院内の機器で完結し、ChatGPTなどの外部AIサービスとは切り離されている、と掲示は説明しています。
掲示にはもう一つ、患者側の選択肢が書かれています。自分の情報を院内AIに取り込まれたくない場合は受付に申し出ればよく、申し出た後も診療は同じように受けられる、という一文です。オプトアウト (「使わないでほしい」と本人が申し出て外れる仕組み) を、公式サイトの掲示で示した形です。
このページを見つけたXの利用者が、病院のWebページを見ていたらローカルLLM利用の注意書きがあって驚いた、と投稿し、ITmediaによると表示回数は59万回を超えました。反応には「先進的」のほか、「医療機器に比べたら安いのかも」という声がありました。
Mac Studio。院長が自分で組んだ環境
ITmediaが院長に取材したところ、運用環境を構築したのは院長本人でした。機材はAppleのMac Studioで、記事に記載された価格は、M5 Max・メモリ36GBの構成で約42万円、上位のM5 Ultra・96GB構成で約95万円から (最安と上位の幅) です。いずれも2026年9月22日(火)発売予定の新型M5搭載機の価格です (記事執筆時点でAppleの公式サイトに掲載されているMac Studioの価格を挙げたものと見られます)。クリニック公式サイトの「クリニック紹介」ページでは、院内サーバーはMac Studio M3 Ultraと記されており、記事の構成とは一致しません。実際の購入価格と構成は公表されていません。
主な用途は二つです。一つは過去の診療情報の要約、もう一つは音声認識を使ったカルテ作成の補助です。どちらも文書を作る作業を助ける使い方で、院長の説明として報じられています。使っているモデル名やパラメータ数 (モデルの規模)、電子カルテとの接続方法、対象となる患者数は、記事の範囲の外です。
「医療機器より安い」をベンダーの価格と並べる
ITmediaは、同じ「医療向けのローカルLLM」を事業として提供する側にも取材しています。GENSHI AIのシステムは、マシン代込みで初期費用400万円から、保守が月額30万円から。カスタマイズを加えると初期費用が1,000万円になる可能性もある、という説明でした。
並べると、ITmediaが挙げた最安構成の約42万円と、ベンダー経由の初期費用400万円からとでは、一桁近く違います。ITmediaの結論は「ベンダーを通して導入すると『医療機器と比べると安い』とはなかなかいえないが、患者の個人情報を保護しながら業務効率化も実現するには必要経費ともいえるかもしれない」というものでした。
差の中身は、機械の値段の差というより、誰が組んで誰が面倒を見るかの差です。院長が自分で組む場合、機材の選定・設定・運用・不具合への対応にかかる時間は本人の持ち出しになります。ベンダーの価格には、その工数と保守の責任に加え、閉域網 (外部のインターネットから切り離した専用回線) の構築や医療情報ガイドラインに沿った運用の手間が含まれています。
数字の読み方 (42万円と400万円のあいだにあるもの)
「42万円で医療AIが導入できる」と読むのは、この数字の使い方として広すぎます。42万円は機材費で、組む人の時間と知識、運用中の管理 (バックアップやアクセス制御) は院の側で持つ前提です。掲示は「外部AIサービスへ送信・流出しない」と説明していますが、院内の機器をどう守っているかは、記事の範囲の外です。
もう一点、掲示の「院内AIに取り込まれる」は、AIが処理の対象にするという意味で書かれています。患者のデータをAIに覚え込ませて賢くしているか (追加学習) どうかは、掲示にも記事にも書かれていません。
日本の読者にとっての意味
AIを使うクリニックに患者として当たる場面は、これから増えていくでしょう。見ておきたい点を二つに分けます。
一つ目は、患者としての見方です。今回の掲示には、AIを使っていること、情報が外に出ないこと、断る手段があること、の三つが書いてありました。従業員が外部の生成AIに顧客情報を入力して漏えいした例 (RIZAPの件・9月) が今年報じられたのとは逆に、院内で処理を完結させた例です。どこで処理されるか、断れるかどうかの二点を、患者の側から確かめる目安になります。
二つ目は、自分で組む側の見方です。Mac Studio一つという規模感は、個人開業医や士業事務所、小さな会社が「自分で組む」ときの目安になります。前提は、組める人の時間と知識があることです。それがない場合の値段が、ベンダーの初期400万円からと月額30万円からで、この差額が「自分でやる」の代金にあたります。
まとめ(FAQ)
Q. クリニックのAIが診断をしているのですか?
A. 院長の説明では、用途は過去の診療情報の要約と、音声認識を使ったカルテ作成の補助です。文書を作る作業を助ける使い方として報じられています。クリニック公式サイトも、AIが単独で診断や治療方針を決定する運用ではなく、医師による確認を前提とすると説明しています。
Q. 42万円あれば医療機関にAIを導入できますか?
A. 約42万円は、ITmediaがMac Studioの最安構成の価格として挙げた数字で、自分で組む場合の機材費の目安です。クリニック公式サイトの機種表記はM3 Ultraです。
Q. 患者は院内AIの利用を断れますか?
A. 掲示には、希望しない場合は受付に申し出ればよく、申し出た後も診療は同じように受けられる、と書かれています。
Q. ローカルLLMなら安全ですか?
A. 掲示は外部AIサービスに送信・流出しないと説明しています。院内の機器の管理 (バックアップやアクセス制御) は院の責任で、記事が伝えているのは掲示の説明までです。
検証メモ(出典と確認の範囲)
- 掲示の原文は、本郷真砂ハートクリニックの公式サイト (2026年9月16日(水)付) で確認しています。
- 院長本人による構築、Mac Studioの価格 (M5 Max・36GB 約42万円 / M5 Ultra・96GB 約95万円から)、用途 (診療情報の要約・音声認識によるカルテ作成補助)、GENSHI AIの価格 (初期400万円から・保守月額30万円から・カスタマイズで初期1,000万円の可能性)、表示回数59万回超は、ITmedia AI+の記事 (2026年9月17日(木)) の記載です。Yahoo!ニュースの転載 (同文) で一致を確認しています。
- クリニック公式サイトの「クリニック紹介」ページ (2026年9月16日(水) 更新) は機材をMac Studio M3 Ultraと記しています。ITmediaが挙げたM5 Max / M5 Ultra搭載機は2026年9月22日(火)発売予定で、記事の構成と公式の表記は一致しません。院長の実際の購入価格・構成は公表されていません。
- 使用モデル名・パラメータ数・電子カルテとの接続方法・患者数は、ITmediaの記事にもクリニック公式サイトにも記載がありません。
- 日本語の報道は、2026年9月18日(金) 時点でITmediaとYahoo!ニュースの転載のみです。
- 日付は日本時間で記載しています。掲載日 (2026年9月19日(土)) 時点の情報です。
Quotidia の視点
町のクリニックの院長が、自分の手で院内にAIサーバーを組んだ。機材はAppleのMac Studio。患者の情報は外へ出さず、嫌なら受付で断れる、と公式サイトに掲示した。この掲示に付いた「医療機器より安い」という声を、ITmediaはベンダーの価格と並べて確かめている。業者に頼めば初期に約400万円、月々の保守に約30万円。数十万円の機械と初期400万円、その差の理由は、機械の値段にはない。差額は、選んで、設定して、動かし続ける人の時間と知識を、誰が持ち出すかで決まる。院長は自分で持ち出した。だから安く見える。Quotidiaのサイトも作りは似ていて、毎朝の記事の投稿は自分たちで組んだ仕組みが回している。同じものを外注したらいくらか、と考えたことがある。その額と月々の費用を比べて安いと感じるとき、組むのに使った夜の時間は勘定に入っていない。数十万円の側に立てる人と、400万円の側に立つしかない人がいて、どちらの数字も「導入費」と呼ばれる。同じ言葉で桁が違う理由を、この一件は分かりやすく見せてくれた。もう一つ目が行くのは掲示のほうだ。使っていること、外に出ないこと、断れることの三つを患者に向けて書いた小さなクリニックがあり、その文面がXで59万回表示された。同じ三行を自分の店や事務所の入口に書けるかどうかで、自作の代金の残りが見えてくる。
関連記事:
- RIZAP、従業員が「個人利用のAI」に顧客情報を誤って入力。健康情報を含む、シャドーAIの流出事例(従業員が外部の生成AIに顧客情報を入力して漏えいした事例を扱った回。あちらは外に出して漏れた話、今回は院内で完結させて外に出さない、と掲示した話。同じ「AIに情報を渡す」の、外と内の対)
- 8年前の古いPCが、2ヶ月約11ドルからAIも使える環境に。インドのJioがクラウドで開放(インドのJioが古いPCでもAIを使える環境を月約11ドルで開放した回。あちらは安くAIに触れる入口の話、今回は数十万円の機材を自分で組んで手元に置く話。AIを安く使う、の二つの形)
四十八本のネジ

板が四枚、ネジが四十八本、六角レンチが一本、それから説明書が十二ページ。金曜の午後四時に、それだけのものが床に広げてあった。知り合いの店で週に三日、昼だけ働いている人の部屋だ。先週、彼女がここへ越してきて、棚を買ったと店で聞いたとき、組み立ては頼んだのかと僕は訊いた。頼んでいなかった。ネジを数えるのだけ手伝って、と言われ、店の休みの金曜に、僕は板を数えに来ている。袋のネジは十本ずつ小さな山にして、最後の山が九本になった。四十九本。段ボールが三つ、まだ閉じたまま壁際に積んであり、いちばん上の箱に、鍋、と油性ペンで書いてある。
「一本、多い」と僕は言った。
「多いぶんには、いいの」。電動のドライバーが、箱から出てきた。去年、別の棚のために買ったもので、そのときの六角レンチが引き出しに六本ある。今日ので七本になる、と彼女は言った。ドライバーは赤く、充電の残りを示す緑のランプが二つ点いている。棚に載せるのは、鍋と本だそうだ。鍋と本を同じ棚に置くつもりの人を、僕は初めて見た。
「前の人ね、壁に画鋲の穴を三十七個残していったの。数えた」
床に説明書を開く。五か国語で、日本語は最後の二ページだった。一枚目の板を彼女が立て、反対の端を僕が押さえる。右手の側から午後の光が説明書の上に入って、図の線が薄くなった。ネジが板に沈む音は、乾いた小枝を折るときに似ている。六本目で、ドライバーが止まった。
「今日は、何を書いてたの」
「文京区の、小さなクリニックの話です」
院長が自分で、AI を組んだ。Apple の Mac Studio という、机に載る大きさの機械を院内に置いて、診療の記録を要約したり、話した言葉を文字に起こしたりする手伝いをさせている。患者の情報は外の AI には送らない、嫌な人は受付で言ってくれれば外す、とクリニックのサイトに掲示した。その掲示が X で五十九万回も表示されて、医療機器より安い、という声が付いた。ITmedia は、その機械をいま買うなら最安の構成でおよそ四十二万円と書き、同じような仕組みを売る会社に訊くと、初期費用が四百万円から、保守が月に三十万円から、だった。安いのは、自分で組める人の話だ。外の AI に打ち込んで漏れた話を、この前、一本書いた。今回は、その逆だ。
「四十二万円と、四百万円」と彼女は言った。「差額が、院長先生の土日なのね」
「土日だけじゃ、済まないと思う。ドライバーも、先に持ってないと」
「持ってるわよ」。ドライバーがまた回った。七本目のネジが、板に沈んだ。
二枚目の板が立って、棚が棚の形になりかけたころ、僕のレコード棚のことを彼女が訊いた。店で一度、自分で組んだと話したのを覚えていたらしい。
「いくらだった」
「八千円」と僕は言った。十一年前の話で、以来ずっと、その値段で人に話している。板が四枚で八千円。
「それだけ?」
「それと、週末が二回と、友だちのドリル。友だちも来た」
「その人は、いくらで来たの」
「昼ご飯と、ビールが四本」
「四本は、多くない?」
「二本は僕が飲んだ」
「じゃあ、八千円じゃないじゃない」。笑いながら、二枚目の板の角を彼女は手のひらで叩いて合わせた。
十一年のあいだ、僕は院長先生と同じ言い方をしていたことになる。報道の四十二万円と、八千円の板。ドリルと、友だちの週末と、ビールが四本と、それから、組み方を知っている、ということ。値段の外に置いてきたものを、床に残ったネジの数といっしょに、僕は数え直した。四十九本のうちの、一本。
「組み立てを頼めば、三千円くらいだったのに」と僕は言った。
「三千円で人が来ると、部屋を片づけなきゃいけないでしょう。片づけがいちばん高いの。知らない人が入ると、その日は一日、部屋が自分のじゃなくなるし」
僕は部屋を見回した。段ボールが三つと、画鋲の穴が三十七個。片づけるところは、たしかにあった。
棚が立った。四時に始めて、六時前だった。いちばん重い鍋を先に下の段へ置いて、棚が動かないのを彼女は手で確かめた。本は上の段に、背の高いものから並んでいく。料理の本が四冊と、そうでないのが十一冊。三ミリほど右に傾いている、と僕は思ったが、言わなかった。僕のレコード棚も、十一年、同じ向きに傾いている。余った一本のネジを、彼女は七本目の六角レンチといっしょに引き出しに入れた。引き出しは、木の音で閉まった。
文京区のクリニックが院内ローカルLLMを自作、機材はMac Studio。ベンダー経由なら初期400万円から、ITmediaが取材
東京都文京区の本郷真砂ハートクリニックが、院内に設置したAIサーバー (ローカルLLM) で診療情報を処理していると、公式サイトに2026年9月16日(水)付で掲示した。外部AIサービスへ患者の情報は送信・流出しない、希望しない患者は受付に申し出ればよい、と明記している。この掲示を紹介したXの投稿は59万回超表示された。ITmedia AI+の2026年9月17日(木)の取材によると、環境を構築したのは院長本人で、機材はAppleのMac Studio。記事はM5 Max・36GB構成で約42万円、M5 Ultra・96GB構成で約95万円からと価格を記載している (クリニック公式サイトの機種表記はM3 Ultra・購入価格は非公表)。用途は過去の診療情報の要約と、音声認識を使ったカルテ作成の補助。同記事が医療向けローカルLLMを提供するGENSHI AIに取材したところ、初期費用は400万円から (マシン代込み)、保守は月額30万円から、カスタマイズすると初期1,000万円になる可能性があるとした。ITmediaは、ベンダー経由では医療機器と比べて安いとはなかなかいえない、と結論づけている。使用モデル名・パラメータ数・電子カルテとの接続方法・患者数は記事に記載がない。一次資料はクリニック公式サイトの掲示 (2026年9月16日(水)) とITmedia AI+ (2026年9月17日(木))。
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