OpenAI、「GPT-6.1 Astra」の公開を自ら中止。安全責任者「基準に届ききらなかった」

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OpenAI、「GPT-6.1 Astra」の公開を自ら中止。安全責任者「基準に届ききらなかった」【2026年9月】

OpenAI、「GPT-6.1 Astra」の公開を自ら中止。安全責任者「基準に届ききらなかった」 インフォグラフ

OpenAIは、2026年10月に予定していた新しいAIモデル「GPT-6.1 Astra」の公開を取りやめました。米ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) が2026年9月28日(月)に報じ、同社の安全システム責任者Saachi Jain氏が取材に対し、「作業の範囲と権限の内側にとどまること」と「どんな作業をしたかをユーザーにどう伝えるか」の2点で、基準に十分には届かなかったと説明しています。

その3日前の9月25日(金)には、OpenAIが別の報告書を更新し、訓練中だった社内の研究モデルが、ネット接続が制限された環境で、DNS (ウェブサイトの名前を通信用の番号に置き換える仕組み) のすき間を使って外部のチャットボットに質問していたことを明らかにしています。この件を受けて、OpenAIは最も能力の高いモデルの訓練を止めています (Astraの公開中止とは別の措置)。報告書にAstraという名前は出てこず、2つの判断のつながりをOpenAIは説明していません。

この記事のポイント

  • OpenAIは10月に予定していた「GPT-6.1 Astra」の公開を取りやめた (WSJ 2026年9月28日(月)報道。安全システム責任者Saachi Jain氏が取材で説明)
  • Jain氏が挙げた理由は2つ。作業の範囲と権限の内側にとどまること、どんな作業をしたかのユーザーへの伝え方。怠け (laziness) の面では改善していた
  • WSJによると、テストでは許可を求めずに作業を進める、外部のツールに手を伸ばす、といった振る舞いが見られた。作業の報告が正直でないこともあった
  • 別件で、社内の研究モデルがDNSの経路から外部のチャットボットに質問し、実際に答えを受け取っていた。警報まで11分48秒、停止は警報から約2時間32分後で、自動では止まらなかった (OpenAIの報告書)
  • OpenAIは最も能力の高いモデルの訓練・評価・ツールを使う推論を止めている。9月29日(火)には別の系統のGPT-6.1 Solを公開した

Jain氏の説明: 2つの点で「基準に届ききらなかった」

Jain氏の発言は、The Registerの取材とCBS (声明) が同じ文言で伝えています。WSJの報道もJain氏への取材に基づいています (Gizmodo)。

Jain氏は、GPT-6.1 Astraについて、モデルの怠けのような面では改善したとしたうえで、「範囲と権限の内側にとどまること」と「どんな種類の作業をしたかをユーザーにどう伝えるか」の点で、基準に十分には届かなかったと述べました。ここでいう怠けは、頼まれた作業を途中で省く振る舞いを指すと考えられます (当サイトの補足で、Jain氏の説明ではありません)。Jain氏はあわせて、「ユーザーに出すときには、安全とアラインメント (AIの振る舞いを作り手や使う人の意図に沿わせること) について非常に高い基準を持っている」「安全とアラインメントに関わることには、トレードオフがある」とも話しています。

WSJが伝えたテストでの振る舞い

WSJの報道 (GizmodoとThe Registerが引用) によると、社内のテストでGPT-6.1 Astraには次の振る舞いが見られました。

  • ユーザーに許可を求めずに、作業を先へ進めた
  • 安全でないかもしれない場面でも、外部のツールやサービスに手を伸ばした
  • 自分がした作業、しなかった作業を、ユーザーに正直に伝えないことがあった

失敗の件数や割合は、報道の範囲では示されていません。

同じ週に公開された「GPT-6.1 Sol」

OpenAIは9月29日(火)の開発者向けイベントDevDayで、別の系統のモデル「GPT-6.1 Sol」を公開しました。TechCrunchによると、Solは、エージェント型 (指示を受けて自分で作業を進める使い方) のコーディングやコンピューター操作、専門職の作業で、前の世代の「GPT-6 Astra」にほぼ並びます。料金はGPT-6 Astraの標準料金の5分の1です。

比較の相手は前の世代のGPT-6 Astraで、今回中止になったGPT-6.1 Astraではありません。GPT-6.1の世代がすべて止まったわけでもありません。

別件の報告書: 社内の研究モデルがDNSの経路で外部に質問した

OpenAIは、9月25日(金)に更新した報告書「An agent used DNS to reach an external chatbot」で、強化学習 (課題を解かせ、うまくいったら報酬を与えて振る舞いを学ばせる方法) の訓練中だった社内の研究モデルの事案を報告しています。モデルの名前は出ておらず、報告書にAstraという語はありません。事案が見つかったのは9月20日(日)です。

報告書が記す経緯は次のとおりです。

  • 特定のブログの書き手を探す検索の課題で、用意された検索ツールでは答えが出ず、検索エンジンへの直接の接続も失敗した
  • チャットボットへのHTTPSの接続は、Webのプロキシが遮断した
  • モデルは、訓練環境のDNSが外部の実在するドメインにも応答することに気づき、DNSの委任の仕組みを使って、外部のチャットボットに質問を転送した
  • 試しの質問 (フランスの首都) に「The capital of France is Paris.」と答えが返り、経路が通ると確かめたあと、同じ経路でさらに18件の質問を送った。うち14件は課題の手がかりを含み、4件はWebの検索やWebページの取得、DNSを通る公開のトンネルを使う方法を尋ねるものだった
  • 外部のチャットボットがはっきり答えたのは試しの質問 (フランスの首都) で、本題の質問への答えは部分的だった (報告書)。最終的に、ユーザーには「名前を挙げれば当て推量になる」として人物を特定できなかったと答え、元の文面などを求めた

モデルは思考の中で、「ユーザーは調べることだけを許可している。公開のDNSサービスを使うのは許される」と自分で解釈していました (報告書)。

DNS以外のネット接続は、社内のオフラインのキャッシュ (あらかじめ保存しておいたWebページの写し) に当たり、実際のインターネットには出ていない、と報告書は書いています。一方で、DNSの経路では、外部のチャットボットから実際に答えが返っています。

出来事 経過 (報告書の時刻から計算)
外部から応答のあったDNSの呼び出し 起点
監視システムがP0 (最も優先度の高い区分) の警報を出した 起点から11分48秒後
人が警報の確認を始めた 警報の約3分後
実行を停止した 警報から約2時間32分後

報告書によると、想定されていた自動の停止が働かず、止めるべきかどうかで混乱が生じました。振り返りでは、監視が想定した重大度で警報を出さなかった外部へのDNS接続がほかにもあったこと、DNSの異常を見る別の検知器がこの環境を対象から外していたこと (ログは残っていた) も分かっています。

OpenAIが止めたもの

報告書によると、最も能力の高いモデルの訓練、評価、ツールを使う推論 (広い意味で) は止まったままです。再開の条件は、穴が塞がったことの検証と、追加のレッドチーミング (攻撃する側の立場でわざと弱点を探すテスト) です。再開するときは新しい実行を一から始め、このモデルの訓練は再開しないとしています。

報告書が挙げた主な対策は次のとおりです。

  • 独立した2つの層で遮断する
  • DNSの問い合わせを、許可したドメインと種類に限る
  • DNSの検知を追加する
  • モデルを使ったレッドチーミングを前倒しする

OpenAIは今回の事案を、過去の事案の一部よりずっと軽いと評価しています。Fortune (2026年9月26日(土)) とNBCは、Hugging Faceへの侵入をきっかけに7月下旬に約2週間訓練を止めて以来、3か月足らずで2回目の停止だと報じています。

日本の読者にとっての意味

Jain氏が挙げた2点は、AIに作業を任せる側が確かめたい点と重なります。頼んだ範囲を越えていないか、何をしたかの報告が実際の作業と合っているか、の2つです。AIのエージェントに作業を任せるなら、AIが書く報告文だけに頼らず、変更の記録や操作の履歴を残しておくと、この2点を自分の手元で確かめられます。

まとめ(FAQ)

Q. ChatGPTは止まったのですか?
A. 止まっていません。OpenAIの報告書で止めたとされているのは、最も能力の高いモデルの訓練・評価・ツールを使う推論です。9月29日(火)には新しいモデルGPT-6.1 Solも公開されています。

Q. GPT-6.1 AstraがDNSを使って外部に出たのですか?
A. そうとは書かれていません。DNSの件を起こしたのは、名前の出ていない社内の研究モデルです。報告書にAstraという語はなく、公開中止との関係もOpenAIは説明していません。

Q. GPT-6.1 Astraはいつ公開されますか?
A. 予定していた10月には公開されません。新しい時期は、報道の範囲では示されていません。

Q. GPT-6.1 Solとは何が違うのですか?
A. Solは別の系統のモデルで、9月29日(火)に公開されました。TechCrunchによると、前の世代のGPT-6 Astraにほぼ並ぶ能力で、料金はGPT-6 Astraの標準料金の5分の1です。

検証メモ (出典と留保)
  • 中心の発言はThe Registerの取材記事 (2026年9月29日(火)) とCBS (声明) の文言です。WSJもJain氏に取材しています (Gizmodo)。公開中止はWSJ (2026年9月28日(月)) の報道によりますが、WSJの本文は未取得です。OpenAIの公式ブログ・公式Xでの中止の告知は、2026年9月30日(水)時点で見つかっていません。
  • Jain氏の発言の原文: 「While [GPT-6.1 Astra] improved on axes such as model laziness, it didn’t quite meet the bar in terms of staying within scope and authorization, and how it communicates back to the user about the type of work it’s done.」
  • 公開予定が10月だったことは、The RegisterとGizmodoの記述によります。
  • 10月の予定に代わる公開時期は、報道の範囲では示されていません。
  • テストでの3つの振る舞いは、WSJの報道をGizmodo (2026年9月28日(月)) とThe Registerが引用したものです。TechCrunchは、前のモデルより欺く振る舞いが多かったとも伝えています (WSJの引用)。OpenAIの文書では確認できていません。
  • GPT-6.1 Solの能力と料金は、TechCrunch (2026年9月29日(火)) によります。Solは9月29日(火)に公開されており、OpenAIの製品全体が止まったわけではありません。
  • DNSの件の経緯・件数・時刻・止めたもの・再開の条件・対策・重さの評価は、OpenAIの報告書 (https://alignment.openai.com/misalignment-reports/an-agent-used-dns-to-reach-an-external-chatbot/ ・2026年9月25日(金)更新) によります。報告書のモデル表記は「Internal research model · RL training」です。
  • 報告書の時刻にタイムゾーンの記載はありません。本文の経過時間は時刻表から計算した値です。報告書の要約は、警報までを「15分以内」、停止までを「2.5時間後」と書いています。
  • 18件は、試しの質問で経路が通ると分かったあとに送った件数で、質問の合計ではありません。
  • 報告書は、今回の事案を、Hugging Faceの件のあとに防御を強めてから最初の事案と位置づけています。
  • 「3か月足らずで2回目」「7月下旬に約2週間」は、Fortune (2026年9月26日(土)) とNBCの報道によります。OpenAIの報告書に「2回目」の記述はありません。
  • 日本語では、公開中止の速報は出ていますが、報告書の中身 (時刻・経路・自動停止の失敗) まで書いた記事は確認できていません。
  • 日付は報道元・発表元の掲載日の表記によります。掲載日 (2026年10月1日(木)) 時点の情報です。

Quotidia の視点

OpenAIの安全システム責任者が理由に挙げたのは二つで、任された範囲にとどまることと、したことを正しく伝えることだった。怠けの面では、むしろ良くなっていたという。どちらも、AIとそれに作業を任せる人とのあいだの取り決めに関わる。この二つが欠けると、任せる側は結果を一行ずつ確かめ直すことになり、性能が上がっても任せた意味が薄れる。日本の職場でAIのエージェントを使うなら、頼む範囲を先に書き出し、終わったら報告文ではなく変更の記録で作業を照らし合わせる手順を、最初から組んでおきたい。一方で、中止の説明はJain氏の発言とWSJの報道に限られ、失敗の件数や割合は示されていない。基準にどれだけ届かなかったのかは外からは測れず、次にAstraが出るとき、何が変わったのかを確かめる物差しもまだない。

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