病院の生成AIが、答えと一緒に出典を示す。医学書院・NTTなどがNTT東日本関東病院で実証を開始
病院の生成AIが、答えと一緒に出典を示す。医学書院・NTTなどがNTT東日本関東病院で実証を開始【2026年11月】

医学書院、NTT、NTTドコモビジネスの3社は2026年11月5日(木)、Ubieと組み、NTT東日本関東病院 (東京都品川区) で、医療従事者向けの生成AIの共同実証を11月から始めると発表しました。医師や看護師などが電子カルテ (患者の診察や検査の記録を、紙ではなくコンピュータで管理する仕組み) の端末から「ユビー生成AI」に質問すると、医学書院が持つ医学・医療情報を探して参照し、答えと一緒に根拠となる情報や出典を示します。生成AIには、事実と違う内容をもっともらしく答えてしまう「ハルシネーション」の問題があり、医療の現場では誤診のリスクにもなりかねません。調べる時間がどれだけ縮むか、答えと根拠がどこまで役に立ち信頼できるかを、実際の病院で確かめるのが今回の実証です。
この記事のポイント
- 医学書院、NTT、NTTドコモビジネスとUbieが、NTT東日本関東病院で医療AIの共同実証を2026年11月に始める
- 医療従事者が電子カルテの端末から「ユビー生成AI」に質問すると、医学書院の医学・医療情報を根拠に、出典を添えて答える
- 院外のサービスに切り替えずに、必要な情報を確かめられる
- 確かめるのは、調べる時間の短縮、答えと根拠の有用性・信頼性など5点。効果の数字はまだない
- 今回の実証で使うのは病院の医療従事者で、患者や一般の人向けのサービスではない
何が始まるのか
発表は、医学書院、NTT、NTTドコモビジネス、Ubie、NTT東日本関東病院の5者の連名です。医学書院、NTT、NTTドコモビジネスの3社が共同で開発した「医療AI情報プラットフォーム」と、Ubieの医療機関向け生成AIサービス「ユビー生成AI」をつなぎ、NTT東日本関東病院を実証の場にします。
3社がこのプラットフォームの共同開発を始めたのは2026年4月です。発表資料によると、開発にはRAG (検索拡張生成。AIが答える前に、決められた資料の中から関係する部分を探し、それを根拠にして答える仕組み) などの技術を使っています。
電子カルテの端末から質問し、出典つきで答えが返る
流れは次のとおりです。
- 医療従事者が、電子カルテの端末から「ユビー生成AI」に質問する
- 医療AI情報プラットフォームが、医学書院の医学・医療情報の中から関係するものを探して参照する
- 答えと一緒に、根拠となる情報や出典が示される
医学書院の情報について、発表資料は「正確で信頼性の高い、適切に著作権処理された」ものと説明しています。AIが答えるときに参照する先として、著作権の処理を済ませた出版社の医学・医療情報を用意した形です。
もう1つの特徴は、電子カルテの端末からそのまま質問できることです。医療従事者は院外のサービスに切り替えずに、必要な医療情報をその場で確認できるようになります。
なぜ病院で「出典」が要るのか
発表資料は背景として、生成AIが事実と異なる情報を作ってしまうハルシネーションによる誤診のリスクと、患者の情報の不適切な扱いへの懸念を挙げています。そのうえで、医療従事者が安全に、適切に生成AIを使える環境づくりが求められていると述べています。
答えと一緒に出典が示されれば、使う人は、その答えが何に基づいているかを、元の情報に当たって確かめられます。それが実際の診療の中でどこまで役に立つかは、今回の検証項目の1つです。
確かめる5つのこと
発表資料が挙げた主な検証項目は次の5つです。
| # | 検証項目 |
|---|---|
| 1 | 医学・医療情報を調べて確かめるのにかかる時間の短縮 |
| 2 | 答えの中身と、根拠になった情報の有用性・信頼性 |
| 3 | 診療の中で使うときの操作のしやすさ、便利さ |
| 4 | 医療現場に入れて運用するために必要な機能と条件 |
| 5 | 医療AIを社会で使っていくための、制度や運用の課題 |
時間がどれだけ縮んだか、答えがどれだけ正しかったかといった数字は、発表の時点ではまだ出ていません。
5者の役割
| 参加者 | 役割 |
|---|---|
| 医学書院 | 第一線の著者による執筆と編集で積み重ねてきた、科学的根拠に基づく医学・医療情報を提供 |
| NTT | 医療制度や現場の実態を踏まえ、研究開発の知見を生かして、NTTグループ全体で医療分野のAI活用を進める |
| NTTドコモビジネス | プラットフォームの構築と運用、生成AIサービスとのAPI連携、ネットワークやクラウドを含む環境づくり、実証の設計と評価 |
| Ubie | ユビー生成AIの提供、医療従事者が使う画面や使い心地の設計、実証を通じた評価と改善 |
| NTT東日本関東病院 | 実証の場の提供、医療従事者が実際に使っての評価、現場の知見に基づく意見 |
ユビー生成AIは、すでに多くの病院に入っているサービスです。Ubieの2026年2月5日(木) の発表によると、2026年1月時点で、大学病院10施設以上を含む全国100病院に導入され、月10万セッションを超えて使われています。今回の医療AI情報プラットフォームとつないで試すのは、そのうちNTT東日本関東病院の1か所です。
これからの予定
発表資料は今後の展開として、次の4つを挙げています。
- ほかの医療機関や、ほかの医療AIサービスへ広げる
- 病院ごとのシステムやセキュリティの条件に合わせ、クラウド、閉域ネットワーク (インターネットから切り離した専用の回線)、オンプレミス (病院の中に機器を置いて動かす形) などの形で提供する
- NTTの大規模言語モデル「tsuzumi」を含むAI基盤モデルの活用を進め、特に高い信頼性が求められる環境にも対応する
- 将来は電子カルテや医療機関向けのサービスとの連携も視野に、調べものにとどまらない業務の支援を進める
3社は2026年4月16日(木) に協業の合意を発表した際、2026年度内に商用展開を始めるとしていました。
患者や一般の人は使えるか
今回の実証で生成AIに質問するのは、NTT東日本関東病院の医療従事者です。患者や一般の人がこの仕組みを試す方法は、発表資料には出てきません。患者の側から見て関わりがあるとすれば、通院先の医師や看護師が、診察の合間に電子カルテの端末で調べものをする場面です。
まだ分かっていないこと
- 実証がいつまで続くか
- 参加する医療従事者の人数や、対象の診療科
- 医学書院の情報がどれだけの量 (書籍や雑誌の点数) か
- 今回の実証で、どの大規模言語モデルを使うか
- 結果をいつ公表するか
- 料金
まとめ(FAQ)
Q. AIが病気を診断するのですか?
A. 違います。医師や看護師などの医療従事者が、医学・医療情報を調べて確かめるための仕組みです。
Q. ハルシネーションはなくなるのですか?
A. まだ分かりません。答えに根拠と出典を添える仕組みにしたうえで、答えと根拠の有用性・信頼性をこれから確かめる段階です。
Q. AIが電子カルテの中身を読むのですか?
A. 発表資料が示しているのは、電子カルテの端末から質問できることまでです。電子カルテとの連携は、発表資料に将来の展開として挙がっています。
Q. NTTのtsuzumiで動いているのですか?
A. 今回の実証で使うモデルの名前は、発表資料にありません。tsuzumiは、今後の展開で活用を進めるモデルとして名前が挙がっています。
検証メモ(出典と確認の範囲)
- 5者連名の報道発表資料 (2026年11月5日(木)) を全文 (前文、背景と目的、取り組みの内容と検証項目、各社の役割、今後の展開) で確認しました。仕組み、検証項目、役割、今後の展開、ハルシネーションの背景はこの資料によります。
- 2026年度内の商用展開と、医療情報を「tsuzumi 2」に学習させて「純国産」の大規模言語モデルをめざすという構想は、医学書院、NTT、NTTドコモビジネスの3社連名による2026年4月16日(木) のニュースリリース (NTTのサイトに掲載) によります (要点の確認で、全文の逐語では読んでいません)。「純国産」は3社がめざすモデルについての言葉です。
- ユビー生成AIの全国100病院への導入と月10万セッション超は、Ubieの2026年2月5日(木) の発表 (PR TIMES) の数値の節によります。2026年1月時点の、ユビー生成AI全体の数字で、今回の実証とつなぐのはNTT東日本関東病院の1か所です。
- 発表資料はハルシネーションや誤診のリスクを背景として挙げていますが、それらが減ったという数字はまだ示していません。答えの有用性・信頼性は、これから確かめる項目です。
- 実証の主体は医学書院、NTT、NTTドコモビジネスの3社で、Ubieと共同で実証し、NTT東日本関東病院は実証の場を提供します。発表資料はこの5者の連名です。
- 今回の実証で質問するのは同病院の医療従事者です。発表資料は結びで、医療従事者や患者が信頼性の高い医療情報を必要なときに活用できる環境をめざすと書いていますが、患者が使う形や時期は示していません。
- 発表資料の「院外のサービスに切り替えることなく」が、患者の情報の扱いとどうつながるかについて、具体的な記述は見つかりませんでした。
- NTTドコモビジネスのWeb版のリリース (発表資料と同じ連名の内容) は取得できませんでした。医学書院とNTT東日本関東病院の自社サイト上の掲載、実証の画面は確認していません。AI Watch (2026年11月5日(木)) の報道と照合し、発表資料にない記述はありませんでした。
- 2026年11月6日(金) 時点の確認による情報です。
Quotidia の視点
この実証で生成AIが参照するのは、出版社の医学書院が著作権の処理を済ませた医学・医療情報で、答えには根拠と出典が添えられる。もっともらしい答えが返ってきても、医師や看護師は出典に戻って中身を読み直せる。ただ、出典がついていることと、答えが正しいことは同じではない。答えが出典の中身をきちんと拾えているか、確かめる手間がどれだけ減るかは、発表資料の検証項目の1つ目と2つ目に、そのまま挙がっている。診察の途中で医師が電子カルテの端末に向かう時間は、患者の側からも見える。その時間が短くなるのか、見比べる作業が一つ増えるだけなのかは、11月からの実証で確かめる段取りだ。結果をいつ公表するかは、まだ書かれていない。
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黄色と青

付箋は、いずれはがすために貼るものだ。僕はずっとそう思っていた。
土曜の朝の九時すぎに、借りていた折りたたみの自転車を返しに行くと、妹は夜勤から帰ったばかりで、紺のカーディガンを着たまま床の座卓の前に座っていた。座卓には看護の教科書が一冊、開いたまま伏せてあった。学生のころから使っている本で、厚さはもとの倍くらいにふくらんでいる。上と横と下から、黄色と青の付箋が飛び出していた。
「黄色のほうが、ずいぶん多いね」と僕は言った。
「黄色は分からないところ。青は、調べて分かったところ」と妹は言った。「分かっても、黄色ははがさないことにしてるの。上から青を貼る」
「それで本が太るのか」
「冬だから、着ぶくれしてるの」
妹は伏せていた本を起こし、座卓の端に寄せてから、携帯の画面をこちらへ向けた。病棟の先輩が、夜勤の終わりにみんなのグループへ送ってきたものらしい。
医学書院、NTT、NTTドコモビジネスの三社がUbieと組んで、東京のNTT東日本関東病院で、この十一月から医療のAIの実証を始めるという発表だった。カルテを開く病院の端末のまま、医師や看護師が「ユビー生成AI」に尋ねると、医学書院の医学や医療の情報をたどって、答えと一緒に、根拠になった情報や出典を出す。院外のサービスに切り替えなくても、その場で調べられる。それで調べものが早く済むのか、出てきた答えと根拠を信じてよいのかを、これから本物の病院で確かめるのだという。
「うちの病院の話じゃないよ」と妹は言った。「それに、まだ試しはじめるところ」
「じゃあ、僕が風邪をひいても、それには聞けないのか」
「お兄ちゃんは聞けない。聞くのは、こっち側の人」
そこで、あくびが一つ出た。
「夜中の三時にね、聞ける人がいないときがあるの。先輩はナースコールで走ってて、先生は別の階にいる。そういうときは、答えより先に、それがどこに書いてあるかが知りたい」
教科書をきちんと閉じ、その上に携帯をのせながら、妹は言った。「冷蔵庫のプリン、賞味期限がきのうだから、食べていいよ」
それから座布団を二つ折りにして、座卓の横で丸くなった。
閉じた本は、それでも少し浮いていた。
妹の寝息がそろうと、部屋には冷蔵庫の低い音しかなくなった。僕はプリンより先に、教科書をもう一度開いた。人の本を黙って開くのは気が引けたが、付箋の色を数えるくらいならかまわないだろうと思った。
ページの端は何度もめくられて、布のように柔らかくなっている。付箋を一枚ずつ指でよけていくと、糊が指の腹に少しずつ残った。余白には鉛筆の字があった。「実習でやった」「→212ページ」「先輩に聞く」。「先輩に聞く」の横には、あとから赤いペンで「聞いた」と足してある。学生のころの妹の字は、いまの字より一回り大きい。黄色を六十まで数えたところで、数えるのはやめた。外の通りを、灯油を売る車が音楽を鳴らして通っていった。
目次から消化器の章を探して、虫垂炎のページを開いた。
小学五年の冬の夜中に、僕は右の下腹が痛くなって、母の運転する車で病院の救急の入口まで運ばれた。母は信号のたびに「大丈夫?」と聞き、僕はそのたびに大丈夫と答えた。大丈夫ではなかった。入口の自動ドアは、二度目に前に立ったときにやっと開いた。母はいまでも、あの夜のことを、僕が夕飯の唐揚げを三つ残した日として覚えている。
救急の待合の長椅子で、妹はパジャマの上にダウンを着て、僕の手袋を両手にはめ、指の先を余らせていた。当直の先生は、僕の右の下腹をゆっくり押して、離すときに痛いかどうかを聞いた。押されるときより、離されるときのほうが痛かった。
虫垂炎のページには、青い付箋が一枚だけ貼ってあった。その下に、黄色はなかった。余白には鉛筆で、こう書いてあった。
兄。小五。夜中。右下。離すと痛い。母の車。
その横では、活字の説明がもっと正確な言葉で並んでいた。痛みの始まる場所と、移っていく先と、押して離したときの痛み。妹はそれを、この本で読むより先に、待合の長椅子から見ていたのだった。お兄ちゃんは聞けない、と言われたのは、ほんの一時間前のことだ。
僕は付箋を元の場所に戻して、本を閉じた。表紙は、やはり少し浮いた。冷蔵庫を開けて、きのうが期限のプリンを出した。蓋をはがし、スプーンを底まで入れると、茶色いカラメルが上がってきた。
電子カルテの端末から生成AIに質問、医学書院の情報を根拠に回答。NTT東日本関東病院で11月から実証
医学書院、NTT、NTTドコモビジネスの3社は2026年11月5日(木)、Ubieと組み、NTT東日本関東病院で医療AI情報プラットフォームの共同実証を11月から始めると発表した。医療従事者が電子カルテの端末から「ユビー生成AI」に質問すると、医学書院の医学・医療情報を検索・参照し、答えとともに根拠となる情報や出典を示す。院外のサービスに切り替えずに調べられる。調べる時間の短縮や、答えと根拠の有用性・信頼性など5点を検証する。発表資料は背景に、生成AIのハルシネーションによる誤診のリスクを挙げている。利用者は同病院の医療従事者で、患者向けではない。3社は2026年4月に共同開発を始め、2026年度内の商用展開をめざしている。
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