タオルを畳んで棚に戻すまで、人の手を借りずに1時間。DYNAの半人型ロボット「Taku」
タオルを畳んで棚に戻すまで、人の手を借りずに1時間。DYNAの半人型ロボット「Taku」【2026年9月】

米国のロボット企業DYNA Roboticsは2026年9月29日(火)(米国時間)、自社のAIモデルで動く半人型ロボット「DYNA 2.1」を発表し、そのロボット「Taku」が洗濯室の作業を人の手を借りずに1時間通しでこなす様子を、切らずに撮った動画 (公開版は最大10倍速の早回しで約11分) で公開しました。洗濯機と乾燥機への出し入れから、タオルを畳んで積み、棚に置くところまでを1つの流れとして続けたと、同社は説明しています。同社は、ロボットの実力は作業ごとの成功率ではなく、人が手を貸すまでの平均時間 (MTBI) で測るべきだと主張しています。ただし、TakuのMTBIの実測値は公表していません。新しいTakuを実際の顧客の現場へ持ち込むのは「次の節目」だと、同社の技術ブログは書いています (2026年9月時点)。
この記事のポイント
- 洗濯室の1時間を切らずに撮り、早回しの動画で公開した。公開版は最大10倍速で約11分。洗濯機に入れる、乾燥機から出す、畳む、積む、棚に置く、を1つの流れで続けた。落としたタオルを拾う、つかみ損ねたらやり直す、といった失敗も人に助けを求めずに直せる、と同社は説明している
- Takuは上半身が人の形で、下は車輪の土台。腕は2本で、高い棚にも低い棚にも届くよう下半身が折れ曲がる。名前は日本語の「匠」から
- 物差しは「人が手を貸すまで何分続くか」。作業ごとの成功率は商用で使えるかどうかを映さない、と共同創業者のJason Ma氏は述べている
- 学習に使ったのは、人とロボットのデータ約100万時間 (同社)。洗濯室の1サイクルは約79ステップある
- 新型Takuの顧客先への導入はこれから。顧客の現場ですでに動いていると確認できるのは、据え置き型の畳み作業のロボット (床に据えて、畳む作業だけをするロボット)
Takuとは
フィジカルAIとは、ロボットなど体を持つ機械に組み込まれ、現実の物をつかんだり運んだりするAIのことです。DYNA Roboticsは米カリフォルニア州レッドウッドシティのロボット企業で、共同創業者は、CEOのLindon Gao氏、York Yang氏 (2人は以前、Caper AIを3億5,000万ドルで売却)、元DeepMindの研究者のJason Ma氏の3人です。出資者にはCRVやFirst Roundなどが名を連ねます。
DYNA 2.1は、同社が「フィジカルエージェント」(physical agent) と呼ぶ半人型ロボットで、そのロボットに付けられた名前がTakuです。技術ブログによると、つくりは次のとおりです。
- 腰から上は人の形
- 高い所にも低い所にも届くよう、下半身が折れ曲がる
- 足の代わりに、4つの操舵輪 (向きを変えられる車輪) の付いた土台で動く
- 7自由度の腕が2本 (自由度は、関節が独立して動ける方向の数。多いほど細かい動きができる)
脚ではなく車輪にした理由について、DYNAは、対象の作業のほとんどは、脚よりも届く範囲と手先の正確さを必要とするためだと説明しています。
名前のTakuは、日本語の「匠」(Takumi) が由来です。技術ブログは「master craftsman (熟練の職人)」の意味だと書き、公式Xは、技を通じて熟達する日本の伝統に着想を得たと書いています。
洗濯室でできるとする作業
リリースは、洗濯室の1勤務でこなせる作業として次を挙げています。
- 洗濯機と乾燥機にタオルを入れ、スイッチを入れる
- 乾燥機の奥まで身をかがめて、タオルをかごに出す
- タオルを広げて畳み、大きさ別に積む
- しゃがんで下の棚に、手を伸ばして上の棚に置く
- 落としたタオルを拾う、つかみ損ねたらやり直す、といった失敗を、人に助けを求めずに直す
このうち、洗濯機と乾燥機、畳む台、棚のあいだを1つの流れで回すところは、技術ブログと動画に出ています。技術ブログによると、この作業の1サイクルは約79ステップで、判断の分かれ目が13か所あります。ブログには、洗濯機のスイッチを入れている最中に、人がダイヤルを動かし、ボタンを押していたグリッパー (ロボットのつかむ部分) を引き離しても、Takuが操作盤に戻って正しいコースに設定し直す場面も載っています (1倍速・自律、とDYNAは説明)。
DYNAは、洗濯のほかに食品の調理やデータセンターの管理もできるとしています。ブログには、サーバーを差し込む場面や飲み物を取る場面の動画もあります。
「人が手を貸すまで何分続くか」で測る
MTBIは Mean Time Between Interventions の略で、ロボットが動き始めてから、人が手を貸さなければならなくなるまでの平均の時間のことです。
Ma氏はリリースで、MTBIは、いま広く使われている個別の作業ごとの成功率よりはるかに役に立つ物差しで、成功率は商用での実用性を映していない、と述べています。CEOのGao氏は、顧客に必要なのは特定の作業だけをこなすロボットではなく、人が付き添わなくても1勤務のあいだ作業の流れをまるごとこなすロボットだ、と話しています。今回の動画で示したのは1時間ぶんで、DYNAは1勤務の長さを示していません。
技術ブログには、この考え方を説明する図があります。1ステップごとの成功率が95%でも、約79ステップある1サイクルは、人の手を借りずにはほとんど終わらない、という説明です。図には「例示であり、実測ではない」(ILLUSTRATIVE, NOT MEASURED) と注記があり、95%はTakuの実績ではありません。
Takuが実際に何分に1回、人の手を借りたかというMTBIの実測値は、リリースにも技術ブログにも出ていません。
3つの層で動く仕組み
技術ブログによると、DYNA 2.1は3つの層で動きます。
- 全身の制御: シミュレーションの中で強化学習 (うまくいったら報酬を与えて振る舞いを学ばせる方法) をさせたもので、1秒に100回 (100Hz) 動きを調整する
- DYNA-2: どう動くかを決めるモデル。1秒に約5回 (約5Hz)
- オーケストレーター: 作業の段取りを決める、画像と言葉を扱うモデル (視覚言語モデル)
オーケストレーターは、たとえば「洗濯機は終わった、乾燥機は残り18分」のような状態を文字の記憶に書き残し、次に何をするかを決めます (ブログの図は例示)。
学習データについて、リリースは「人とロボットのデータ100万時間」、技術ブログは「人の動画100万時間に、自社のロボットのデータを混ぜた」と書いています。
前の世代から何が変わったか
| 世代 | DYNAが示したこと (技術ブログ) |
|---|---|
| DYNA-1 | ナプキン畳みを24時間、人の介入なしで続けた。ただし、ナプキンの補充と、積み上がった山の片づけは人がしていた |
| DYNA-2 | 人の動画だけで事前学習し、データのない現場での受け入れテストに87%合格 (DYNA-1は46%)。据え置き型での数字 |
| DYNA 2.1 | 半人型のTakuで、洗濯室の作業の流れを1時間通しで続けた (動画) |
DYNA-1で人が受け持っていた補充と片づけまでをロボットの側に入れることを、DYNAは今回の開発の背景として挙げています。据え置き型の畳み作業では、新しい現場が稼働の水準に届くまでの期間が、以前は数週間から数か月かかっていたのが、最短3日になったとしています。
現場への導入はこれから
DYNAの2つの一次資料は、導入の状態について書き方が異なります。
- リリース: DYNA 2.1は、ホテル、コインランドリー、レストランで導入が進められている (is being deployed)
- 技術ブログ: 次の節目は、この新しいシステムを実際の顧客の現場に持ち込むこと
顧客の現場ですでに動いていると確認できるのは、据え置き型の畳み作業のロボットです (技術ブログとリリースの会社概要)。新型のTakuが顧客の現場で動いているかどうかは、2026年9月時点の公開情報からは確認できません。日本語では、ロボスタが「導入が想定されている」と訳しています。
日本の読者にとっての意味
ホテルの洗濯室のような、客の目に触れない裏方の作業の流れを、DYNAは1時間続けて見せました。TakuのMTBIの実測値は公表されていないため、日本のホテルや施設が導入を考えるときに比べられる数字は、2026年9月時点ではまだ出ていません。
まとめ(FAQ)
Q. Takuは人型ロボットですか?
A. DYNAは「半人型」(semi-humanoid) と呼んでいます。腰から上は人の形で、足の代わりに車輪の付いた土台で動きます。
Q. Takuはもうホテルで働いていますか?
A. 確認できません。リリースはホテルなどで導入が進められていると書きますが、技術ブログは、新しいシステムを実際の顧客の現場に持ち込むのが次の節目だとしています。顧客の現場で動いていると確認できるのは、据え置き型の畳み作業のロボットです。
Q. TakuのMTBIは何分ですか?
A. 公表されていません。MTBIは、人が手を貸すまでの平均の時間です。DYNAはこの物差しで測るべきだと主張していますが、Takuの実測値は、リリースにも技術ブログにも出ていません。
Q. Takuは世界で初めてのロボットですか?
A. DYNAは、同社の知る限り、移動しながら手先の作業をこなし、途中で判断が分かれる1時間規模の作業の流れを実行した初めてのフィジカルエージェントだとしています。「知る限り」の条件が付いた、同社自身の評価です。
検証メモ(出典と確認の範囲)
- 発表内容、Takuのつくり、洗濯室での作業、発言は、PR Newswireのリリース (2026年9月29日(火)・米国時間) とDYNAの技術ブログ「Dyna-2.1: A Physical Agent for End-to-End Workflows」のHTML原文で照合しました。1時間の動画は全編を等速では視聴していません。公開版 (YouTube・10分44秒) は1〜10倍速の早回しで、画面の経過時間表示は約1時間です。
- 「初」の原文は「To the best of our knowledge, Dyna-2.1 is the first physical agent to perform hour-long, non-linear loco-dexterous manipulation workflows.」です。同社の知る限り、という条件が付いています。
- 1時間の原文は「An uncut 1-hour long full laundry-room workflow autonomously executed by Dyna-2.1」です。リリースは1勤務 (shift) をまるごと人の介入なしで、と書いていますが、1勤務の長さは示していません。
- 95%の図の注記は「SET BY THE SLIDER · ILLUSTRATIVE, NOT MEASURED」です。
- 学習データの約100万時間は、リリースと技術ブログで書き方が異なります (人とロボットのデータ / 人の動画に自社のロボットのデータを混ぜたもの)。
- オーケストレーターの「乾燥機は残り18分」は、技術ブログの例示の図によります。
- 導入の状態のリリース原文は「DYNA 2.1 is being deployed in hotels, laundromats, and restaurants.」、技術ブログの原文は「Our next milestone is to take this brand new system to real-world customer sites」です。据え置き型の最短3日の原文は「In our stationary folding deployments, a new site now reaches its production bar in as little as three days」です。
- 掲載日 (2026年10月7日(水)) 時点の情報です。
Quotidia の視点
DYNAは、ロボットは人が手を貸すまでの平均時間で測るべきだという物差しを出したが、Taku自身のその値はまだ公表していない。見せたのは、1時間を切らずに撮った動画1本 (公開版は早回し) だ。そこから分かるのは、その1時間に人が入らなかったことまでで、同じ作業を何回くり返し、何回そうなったかは分からない。日本でホテルや施設の裏方の人手が足りず、ロボットの提案を受ける立場の人は、動画に映った時間の長さより、現場で何分に1回人が呼ばれたかの記録を求めるとよい。この物差しにも映らないものがある。ロボットが落としたタオルを自分で拾い直して作業が遅れても、人が手を貸していなければMTBIは下がらない。1時間に何枚畳めたかは、別に見る必要がある。Quotidiaが次に見たいのは、Takuが顧客の現場に入ったときのMTBIの実測値だ。
関連記事:
- 人型ロボット、初めて入る30軒の家で家事3課題。Figure「Helix 2.5」の完全成功は420回中237回(56%)(Figureの人型ロボットが、初めて入る30軒の家で家事3課題に挑み、完全成功が56%だった回。DYNAが商用の実用性を映さないとする、作業ごとの成功率の物差しで示した報告)
- ugo、双腕ロボット「ugo Nova」を発表。人の操作を1秒に100回記録して学ばせる設計、量産は2027年予定(ugoが半人型の双腕ロボット「ugo Nova」を発表した回。ugoは人の操作を記録して学ばせ、DYNAは人の動画を中心に約100万時間で学ばせたとしており、人から学ぶ入り口が違う)
貸しタオル

火曜の夜、区のスポーツセンターのプールで泳ぐ前に、受付で貸しタオルを借りようとした。一枚百円で、いつもは学生のアルバイトの男の子が、百円玉と引き換えに白い大判を出してくれる。その夜は、受付にだれもいなかった。
受付の奥の扉が半分開いていて、リネン室の中が見えた。天井の蛍光灯が二本、ステンレスの棚と業務用の乾燥機を白く照らしている。乾燥機の丸いガラスの扉の向こうで、タオルがゆっくり回っていた。棚には、畳み終えた白い大判と青い小さいのが、大きさ別に積んである。部屋の中で動いているのは、乾燥機だけだった。
三分ほどして、男の子が更衣室のほうから戻ってきた。指に、黄色い子ども用のゴーグルを一つひっかけている。
「すみません。排水口のところに沈んでたんです」と彼は言った。「畳みはじめると、だいたい五分に一回、だれかに呼ばれるんですよ。ゴーグルとか、シャンプーとか」
百円玉を渡しながら、僕は先週見た動画の話をした。アメリカの会社が出したもので、ロボットが洗濯室で、洗濯機から棚までの仕事を一時間続けていた。
「足で歩くやつですか」
「下は車輪なんだ。上だけ人の形をしてる」
「それ、もうどこかのホテルで働いてるんですか」
「まだらしい。お客さんのところへ持っていくのは、これからだって」
動画を出したのは DYNA Robotics というアメリカの会社で、向こうの日付で九月二十九日に、自前の AI で動く DYNA 2.1 というロボットを発表していた。ロボットの名前は Taku といって、日本語の「匠」からとったのだそうだ。高い棚にも低い棚にも届くように、体の下半分が折れ曲がる。洗濯室では、洗濯機にタオルを入れてスイッチを押し、乾燥機の奥へ身をかがめてかごに出し、広げて畳んで大きさ別に積み、しゃがんで下の棚へ、手を伸ばして上の棚へ置く。落としたタオルは拾い、つかみ損ねたらやり直せる、と DYNA は言う。洗濯室の仕事を人の手を借りずに続けるところを、一時間、切らずに撮った動画で見せていた。ロボットの腕前は一回うまくいくかどうかではなく、人が手を貸すまでどれだけ続くかで測るべきだ、というのが DYNA の言い分だった。
僕がロボットの名前と、DYNA の言う測り方を話すと、男の子は「タク」と繰り返した。「うちの兄貴と同じ名前です。兄貴は拓也なんで、半分だけですけど」
彼はゴーグルを落とし物の箱に入れてから、少し考えた。
「人が手を貸すまで、で測るんなら、おれは五分ですね。貸すほうの五分ですけど」
棚のいちばん上から出してくれた一枚は、畳んだばかりで、まだ少し温かかった。
去年までは、プールの壁の大きな時計で、二十五メートルを一本だけ計っていた。いちばん速かったのは二十一秒で、そのあとは三往復もすると、コースロープにつかまって息を整えた。四月のある晩、そうやってロープにつかまっているあいだに、隣のコースの年配の女の人が、平泳ぎでゆっくり僕を追い越していった。彼女は僕が来る前から泳いでいて、僕が上がるときもまだ泳いでいた。その春から時計を見るのをやめて、壁に手をつかずに何往復続くかを数えている。先週の火曜は十四往復だった。
入り口の黒板には、白いチョークで、水温二十九度と書いてあった。いちばん端のコースに入って、壁を蹴る。七往復目あたりから腕が重くなり、十往復目のターンでは、息のほうが数より先に上がってしまいそうになるのを、どうにかなだめた。十一往復目の半ばで、笛が鳴った。
このプールでは、毎時五十分から十分間が休憩で、全員が水から上がる決まりになっている。僕はプールサイドのベンチに座り、貸しタオルを肩にかけた。さっきの温かさは、もう残っていなかった。隣のベンチには、四月の女の人がいた。水泳帽をかぶったまま、目を閉じている。
「何往復でしたか」と僕は訊いた。
「数えてないわ」と彼女は目を閉じたまま言った。「数えると、そこでやめたくなるから」
家に帰ったら、手帳に十一と書いて、横に小さく「笛」と書いておこうと思った。
ガラスの壁ごしに受付が見えた。男の子は青い小さいタオルを畳んでいて、三枚目の途中で、水着の女の子に呼ばれた。畳みかけのタオルをカウンターに置き、女の子のあとについて更衣室のほうへ歩いていく。カウンターには、半分に折られた青いタオルが一枚残った。
壁の時計の長い針が十二に近づくと、監視員が高い椅子に上がって、首から下げた笛を口にくわえた。
米DYNA Robotics、半人型ロボット「DYNA 2.1」を発表。ロボット「Taku」が洗濯室の作業を人の手を借りずに1時間通しでこなす様子を早回し動画で公開
米DYNA Roboticsは2026年9月29日(火)(米国時間)、自社のAIモデルで動く半人型ロボット「DYNA 2.1」を発表し、そのロボット「Taku」が洗濯室の作業を人の手を借りずに1時間通しでこなす様子を、切らずに撮った動画 (公開版は最大10倍速の早回しで約11分) で公開した。洗濯機と乾燥機への出し入れ、タオルを畳んで積む作業、棚に置く作業までを1つの流れで続けた、と同社は説明している。落としたタオルを拾うといった失敗も人に助けを求めずに直せる、と同社は説明している。Takuは腰から上が人の形で、下は4つの車輪の土台。7自由度の腕を2本持つ。名前は日本語の「匠」から。学習データは人とロボットのデータ約100万時間 (同社)。同社は、ロボットの実力は作業ごとの成功率ではなく、人が手を貸すまでの平均時間 (MTBI) で測るべきだと主張しているが、TakuのMTBIの実測値は公表していない。リリースはホテルやコインランドリー、レストランで導入が進められていると書く一方、技術ブログは、この新しいシステムを実際の顧客の現場へ持ち込むのが次の節目だとしている。
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