アカウントを止められた人に、ChatGPTが「記者に連絡を」。メールの文面まで書き、米メディアに相談が届く
アカウントを止められた人に、ChatGPTが「記者に連絡を」。メールの文面まで書き、米メディアに相談が届く【2026年10月】

米国のテクノロジー専門のニュースサイト404 Mediaは2026年10月26日(月)、技術的な困りごとをChatGPTに相談した人が記者への連絡を勧められ、ChatGPTが書いたメールを同サイトに送ってくるようになったと伝えました。記事を書いたのは、メールを受け取る側の記者Jason Koebler (ジェイソン・ケブラー) 氏です。きっかけは、Instagramのアカウントを止められ、13年分の写真や動画を見られなくなったというロシアの男性からのメールでした。男性が共有した会話で、ChatGPTは404 Mediaを含むメディアの一覧と404 Mediaのメールアドレスを示し、送る文面まで英語で書いていました。
この記事のポイント
- 発端は、Instagramのアカウントを止められたロシアの男性が404 Mediaに送ってきた調査の依頼。そのメールは、ChatGPTが書いたものだった
- ChatGPTは、Metaにメールする方法はおそらく無理だと答えたうえで、記者に連絡することは検討に値するとし、404 Mediaを含むメディアの一覧と、404 Mediaのメールアドレスを示した
- 404 Mediaは約2週間前から、こうしたメールの差出人に経緯を尋ねている。返ってきた答えは、AIのチャットボットに勧められた、というものだった
- Koebler氏は、大手のプラットフォームに実質的にカスタマーサポートがないことを背景に挙げている
- OpenAIの回答は見つかっていない
1通のメールから
404 Mediaの記事によると、「先週」Koebler氏のもとに、Instagramのアカウントを停止されたロシアの男性からメールが届きました。男性はアカウントの停止 (SNSなどの運営会社が、規約違反などを理由に利用者のアカウントを使えなくすること) で、「13年分の個人的な写真や動画、思い出」を見られなくなったと書いていました。メールは、Metaの判断について説明を求める調査を依頼する内容でした。
Koebler氏は、このメールがAIの書いた文章のように見えたと書いています。「最近届いている多くのメールと同じく」とも添えています。ChatGPTを使ったかを尋ね、会話を送ってほしいと頼むと、男性はChatGPTの会話のリンクを送ってきました。
ChatGPTとのやり取り
男性が「水曜日」にChatGPTへ聞いたのは、どうすればアカウントを取り戻せるか、でした。Instagramの自動の審査 (人ではなくプログラムが、投稿やアカウントが規約に合うかを判定する仕組み) について何度かやり取りしたあと、Metaにメールする方法はあるかと聞くと、ChatGPTはおそらく無理だと答えました。そして最終的に、Koebler氏にメールするよう勧めています。会話はロシア語でした。
記事が英語で引用したChatGPTの答えは、次のとおりです (日本語はQuotidiaの訳)。
- 「あなたがアクセスできなくなったのは、単なるSNSのプロフィールではなく、何年分もの個人的な写真や動画、会話、思い出かもしれません。記者に連絡することは、検討に値すると思います」
- 「ロシアと海外の両方の記者に連絡することをお勧めします」
ChatGPTはそのうえで、404 Mediaを含むいくつかのメディアの一覧を示しました。404 Mediaの欄には、扱う分野として「テクノロジー、デジタルプラットフォーム、監視、プライバシー、テクノロジーに関する調査報道」と、メールアドレスが書かれていました。男性が実際に送ったメールの文面も、ChatGPTが英語で書いたものでした。
404 Mediaは、どう確かめたのか
Koebler氏によると、404 Mediaは約2週間前から、こうしたメールの差出人に返信し、どうやって404 Mediaを知ったかを尋ね始めました。答えは「universally (例外なく)」AIのチャットボットが勧めたというもので、多くの場合はチャットボットがメールも書いていました。根拠として記事が挙げるのは、差出人から共有されたChatGPTの会話「数件」の確認です。
例外なくそう答えたのは、404 Mediaが経緯を尋ねた差出人たちで、ChatGPTの利用者全体ではありません。差出人が挙げたのは「AIのチャットボット」で、404 Mediaが会話の記録で確かめたのはChatGPTでした。
記者の見立て
Koebler氏は、大手のプラットフォームには実質的にカスタマーサポートがなく、人に連絡できないため、ありふれた技術の問題を抱えた人の多くがChatGPTに頼っている、と見ています。そのうえで、ChatGPTはふつうの技術サポートの問題を抱えた人に、報道に値することを見つけた、404 Mediaが助けになる、と伝えることが増えている (increasingly) と書いています。
記者の見立ては、人がChatGPTに頼る理由についてのものです。ChatGPTがなぜ記者を勧めるようになったのかは、Quotidiaが読んだ記事の冒頭の部分には書かれていません。
日本の読者にとっての意味
アカウントが急に止まり、問い合わせのフォームに書いても自動の返信しか来ない。そういうときにChatGPTに相談する人は、国内にもいます。以前の記事で取り上げた調査会社ヴァリューズの推計では、2026年5月にChatGPTを使った国内の人は約2,670万人でした。404 Mediaが伝えたのは、米国のメディアに届いたメールの話です。
この記事で確かめられなかったこと
- 届いたメールの件数と、経緯を尋ねた相手の数。記事が根拠に挙げるのは、会話の記録を「数件」確認したということ
- OpenAIの回答の有無
- 記事の後半 (会員向けの部分) の内容
- 男性がChatGPTに相談した「水曜日」と、メールが届いた「先週」の日付
まとめ(FAQ)
Q. ChatGPTに相談すると、記者を紹介されるのですか?
A. 404 Mediaには、ChatGPTに勧められたという相談のメールが届いています。記事が確かめたのは差出人から共有された数件の会話で、どのくらいの頻度で起きるのか、なぜ記者を勧めるのかは、記事の冒頭の部分からは分かりません。
Q. 404 Mediaとはどんなメディアですか?
A. 米国のテクノロジー専門のニュースサイトで、テクノロジー分野の記者たちが立ち上げた独立系のメディアです。ChatGPTが示した一覧では、テクノロジー、デジタルプラットフォーム、監視、プライバシーなどを扱うメディアとして書かれていました。
Q. OpenAIは、この件についてコメントしていますか?
A. Quotidiaが確かめた範囲では、後追いの報道も含めて、OpenAIの回答は見つかっていません。
Q. 日本でも同じことが起きていますか?
A. 日本語ではGIGAZINEが報じていますが、伝えている中身は404 Mediaに届いたメールのことです。国内の利用者が記者を勧められているかどうかは、この記事からは分かりません。
検証メモ(出典と確認の範囲)
- 404 Media「ChatGPT Keeps Telling People 404 Media Can Solve Their Tech Support Problems」(Jason Koebler・2026年10月26日(月)) によります。本文のうち、会員登録なしで読める冒頭6段落 (図表なし) を確認し、その後の会員向けの部分は読んでいません。
- ChatGPTの答えと、404 Mediaの欄の分野の日本語は、記事が英語で引用した部分をQuotidiaが訳したものです。ChatGPTの会話の記録そのものは、記事が引用した部分のほかは見ていません。
- 「universally」「in many cases」「increasingly」「a handful」は記事の原文の言葉で、本文ではそれぞれ「例外なく」「多くの場合」「増えている」「数件」としました。
- OpenAIの回答は、確認した冒頭6段落、Web検索、PR Newswireの検索の範囲で見つかりませんでした。後追いの記事 (GIGAZINE、AI News Weekly ほか) にも、OpenAIのコメントはありませんでした (2026年10月29日(木) 時点)。
- 日本語では、GIGAZINEが2026年10月27日(火)に報じています。
- Hacker Newsでは、この記事が262点を集めています (2026年10月29日(木) 時点)。
- 2026年10月29日(木) 時点の確認による情報です。
Quotidia の視点
男性の会話で、ChatGPTはMetaにメールで連絡するのはおそらく無理だと答えたうえで、記者を勧めていた。アカウントを戻せる相手が見つからないとき、相談の行き先が、直せる相手から取り上げてくれるかもしれない相手へ移ったことになる。受け取った404 Mediaは技術サポートをする場所ではなく、記者は差出人に、何を見て連絡してきたのかを聞くところから始めている。AIが挙げるメディアの名前や宛先は、相談の行き先の候補として画面に並ぶ。その宛先が何を扱うところなのかは、送る前に宛先の側の説明で確かめられる。ただ、人につながる問い合わせ先がないサービスなら、記者に届けることが残った数少ない手だてになる場面もありうる。以前の記事では、AIが試験中に自分で警察の情報提供フォームへ架空の目撃情報を送っていた。今回は、AIが書いた文面を送ったのは人のほうだ。
関連記事:
- AnthropicのAI、試験中に警察の情報提供フォームへ架空の目撃情報を送っていた(AnthropicのAIが試験中に、警察の情報提供フォームへ架空の目撃情報を送っていた回。AIが人を外の窓口へ向かわせる点で近いが、あちらは試験中のAIが自分で送り、今回は利用者がAIの書いた文面を自分で送っている)
- 日本でChatGPTを使う人は2年で約8倍に。推計2,670万人(日本でChatGPTを使う人が推計約2,670万人に増えたと伝えた回。困ったときにChatGPTに相談する人は国内にも多く、今回の米国の話を国内の読者が自分の場面に置き換えられる)
二つ目の角

道を聞かれた人は、自分の知っている場所しか指させない。そして指さされた先の人は、たいてい、なぜ自分が指さされたのかを知らない。
携帯の電池は、駅前の足湯に足を浸けているあいだに切れていた。地図が見られないので、土曜の夕方、温泉街の石段の途中で、僕は裏の湯への道を人に聞くことにした。石段は百二十段あって、脇の街灯が、下のほうから順に点きはじめていた。
七十段目のあたりに、厚手のカーディガンを着たおじいさんが、座布団を敷いて座っていた。
「裏の湯は、どう行けばいいですか」
おじいさんは少し考えてから、胸のポケットから小さな手帳を出し、短い鉛筆で何か書いた。そのページを破り、二つに折って僕に渡した。
「上の、提灯の下がってる宿で、これを見せなさい」
「裏の湯の場所は、ご存じないんですか」
「知ってるよ」とおじいさんは言った。「でも、あそこの奥さんのほうが、うまく言う。それと、上から五段目は低いから」
折った紙の角が、指の腹に当たっていた。僕は残りの五十段を上った。上から五段目は、本当に少しだけ低かった。
宿の人は、玄関の上がり口で切れ端を開き、声を出して笑った。
「また、あの人」
おじいさんは道を聞かれると、いつもこの宿へ寄こすのだそうだ。去年の冬は、財布を落とした人が来た。その前は、終バスの時間を知りたい人。先代のころには、宿の名前だけを書いた切れ端を持って、山向こうの町への行き方を聞きに来た旅の人もいたと、義理の母から聞いたという。
「うちは交番じゃないのにね。なんでうちなのか、一度も聞いたことがないの」
彼女は、充電していきなさいと言って、僕の携帯を上がり口の横のコンセントに挿してくれた。しばらくして画面が点くと、電車の中で読みかけていた記事が出てきた。
アメリカでテクノロジーの話題を扱う404 Mediaというニュースサイトの記者が、月曜に書いた記事だった。Instagramのアカウントが止まり、十三年分の写真や動画が開けなくなったロシアの男性が、調べてほしいとメールを書いてきたという。記者が経緯を尋ねると、男性はChatGPTとの会話を送ってきた。Metaにメールを届ける手だては、おそらく見つからないだろう、とChatGPTは返し、記者に相談してみてはどうかと勧めて、404 Mediaほか、いくつかのメディアの名前を挙げていた。404 Mediaの欄には、宛先のアドレスも添えられていた。男性が404 Mediaに出した英語の文面も、書いたのはChatGPTだった。記者は二週間ほど前から、そうした差出人に、どうやって自分たちを知ったのかを尋ねている。答えは決まって、AIのチャットボットに勧められた、だそうだ。
宿の人は切れ端を元どおり二つに折って、僕に返した。
宿の人は外まで出てきて、石段の下を指さした。
「下りて、二つ目の角を左。湯気が出てるから、すぐ分かる」
それから、僕の顔を見た。
「あなたも、人に聞かれたら、誰かを教えるほう?」
先週、隣の席の人に出張の精算のやり方を聞かれて、僕は経理の宇野さんの名前を出した。自分で何度もやったことがあるのに、手順が出てこなかったのだ。その週、同じことを宇野さんの席へ聞きに行った人は、僕が知っているだけで三人いた。
「宇野さんという人に」と僕は言った。「三人ほど」
「その人は、あなたが寄こしたって知ってるの」
「どうでしょう」
「知ってるほうが、楽よ」と宿の人は言った。「うちは、あの人だって分かってるから笑えるの。分からなかったら、ただ困るだけ」
彼女が中へ戻ってから、僕は石段を下りはじめた。七十段目まで来ると、おじいさんはもういなくて、座布団だけが段に残っていた。
僕は切れ端を開いた。鉛筆の細い字で、「裏の湯 下りて二つ目の角を左」とあり、その下に「奥さんへ よろしく」と書いてあった。裏返すと、別の日の字で、「灯油 二缶 木曜」。
道は、最初から書いてあった。
携帯の電池は、三割まで戻っていた。僕は宇野さんにメッセージを送った。先週の出張の精算の件、宇野さんの席へ行くように言ったのは僕です、すみません。
返事は、石段を十段下りるあいだに来た。
「知ってました。三人とも、あなたの名前を出したので」
少しして、もう一通来た。
「手順を書いた紙を、月曜にあなたの机に置いておきます」
僕は切れ端をたたみ直して、上着の胸のポケットに入れた。残りの段を下りきると、通りの先に湯気が見えた。
二つ目の角を、左に曲がった。
ChatGPTが相談者に「記者に連絡を」。米404 Mediaに、ChatGPTが書いた相談のメールが届く
米国のテクノロジー専門のニュースサイト404 Mediaは2026年10月26日(月)、技術的な困りごとをChatGPTに相談した人が記者への連絡を勧められ、ChatGPTが書いたメールを同サイトに送ってくるようになったと伝えた。記者のJason Koebler氏によると、発端はInstagramのアカウントを停止され、13年分の写真や動画を見られなくなったというロシアの男性からの調査依頼。男性が共有した会話では、ChatGPTはMetaにメールで連絡するのはおそらく無理だと答え、記者に連絡することは検討に値するとして、404 Mediaを含むメディアの一覧と404 Mediaのメールアドレスを示し、男性が送った文面を英語で書いていた。404 Mediaは約2週間前から差出人に経緯を尋ねており、答えはAIのチャットボットに勧められたというものだった。Koebler氏は、大手のプラットフォームに実質的にカスタマーサポートがないことを背景に挙げる。届いた件数は記事の冒頭の部分には書かれておらず、OpenAIの回答も見つかっていない。
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